研究実績の概要 |
本研究では四官能性アミンの中心部にアゾベンゼンを導入した架橋剤N,N-Bis(3,5-diaminobenzoyl)-4,4’-diaminoazobenzene (BDA-Azo)と、1,4-Phenylene diisocyanate (PDI)との末端架橋法により尿素結合を有する三次元ネットワークを構築した。また、水中で光異性化を可能にする四官能性のアゾベンゼンの候補として(E)-4,4'-(diazene-1,2-diyl)bis(N-(3,5-diaminophenyl)benzamide)および(E)-N,N'-(diazene-1,2-diylbis(3,5-dimethoxy-4,1-phenylene))bis(3,5-diaminobenzamide)の合成を行った。これらの4官能性架橋剤をPyromellitic dianhydride(PMDA)と反応させ、高分子ゲルを作成した。これらの架橋剤とPDIもしくはPMDAの混合溶液をスライドガラス基板間に毛細管現象を利用して導入し、ゲル化した後、化学イミド化し、その後上部のガラス基板を剥がして薄膜を作製した。このポリイミド薄膜に青色レーザーを照射し、レーザー光照射前後での局所的な弾性率を計測した。その結果、青色レーザー照射部位および、レーザー照射部位から1.5 cm程度離れた表面の弾性率もトランスーシス光異性化に伴い、増加した。この実験結果はレーザー光照射に伴う光異性化がレーザー光照射領域以外にも伝搬し、ドミノ倒し的異性化が生じる可能性が示差された。このドミノ倒し的光異性化を直接的に証明するために、ラマン分光によって、レーザー照射部位のトランスーシス光異性化を定量化しようとしたが、アゾベンゼンからのシグナルが、高分子ゲル中の溶媒のピークと重なってしまい、定量化はできなかった。
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