昨年度までにアニオン交換型高分子の親水部と疎水部構造が安定性、アニオン導電率に及ぼす影響を明らかにすることができている。本年度は、部分フッ素化した高分子を基本骨格として、パーフルオロアルキル(PAF)基を有し機械強度に優れたQPAF-4膜と、ヘキサフルオロイソプロピリデン(BAF)基を有し低含水・高アニオン導電率の特性を持つBAF-QAF膜を組み合わせた新規な三元共重合体(QBPA)アニオン交換型高分子を設計し、組成の効果を検討するとともに薄膜物性を解析した。 疎水部の比率(PAF/(BAF+PAF))が異なる一連のQBPAを合成した。重合反応、四級化反応はこれまで当研究室で開発してきた方法によりいずれも定量的に進行し、核磁気共鳴スペクトルにより構造と組成を確認するとともに、ゲル浸透クロマトグラフにより高分子量体が生成していることを明らかにした。QBPAは極性有機溶媒に可溶であり、溶液キャスト法により茶色透明の薄膜に成型できた。薄膜の引張試験の結果、QBPA膜はBAF-QAFと比較して伸び率が大きくなっており、PAF=17mol%を含むQBPA膜はBAF-QAFの約4倍という高い伸び率を達成した。また、QBPA膜の水中でのアニオン導電率はBAF-QAF膜やQPAF-4膜よりも高く、PAF=17-50の時に最も高い値となった。QBPA膜のアニオン導電率は80 ℃では161mS/cmにも達成し、これまで報告されているアニオン交換膜の中でも極めて高い値を達成できた。また、4M KOH水溶液中における安定性を評価したところ、80℃で1000時間後においても、構造や物性が変化しないことを明らかにした。高分子主鎖構造とアンモニウム基のいずれもが優れたアルカリ耐性を有することが確認できた。QBPA膜を用いたアニオン膜型燃料電池の評価も進めており、優れた電流電圧特性が得られている。
|