研究課題/領域番号 |
18H02031
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
高野 敦志 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (00236241)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | オリンピックポリマー / かご型高分子 / カテナン型高分子 / アニオン重合 |
研究実績の概要 |
本研究では4分岐星型高分子同士の二分子間相補的末端結合により、かご型高分子を調製し、その後2つの分岐点を開裂させて、カテナン型高分子へと変換する合成戦略を考案した。H30年度は先ずカテナン型高分子の前駆体となる「かご型高分子」の精密合成およびキャラクタリゼーションを行った。 アミノ基末端、およびN-ヒドロキシコハク酸イミドエステル基末端を有する2種類の4分岐星型ポリエチレンオキシド (分子量Mw=12k、分子量分布Mw/Mn=1.03)を、酒井らにより報告SECされているTetraPEGゲルの合成方法にしたがい、カップリングさせた。Tetra PEGゲルの合成はC*濃度条件で反応が行われるが、本研究では多量体の形成を抑制するために、C*/50の希薄条件で24時間反応を行った。カップリング生成物はSEC測定により、広い分子量分布を有することが確認された。その後、α-シクロデキストリンとポリエチレンオキシドの包接錯体形成を利用して、反応生成物中に含まれる目的物以外の分子の除去を試みた。すなわち、カップリング生成物中へα-シクロデキストリンを添加し、精製を行ったところ、単峰性の試料が得られた。この精製試料と星型ポリエチレンオキシド(原料)のSEC-MALS測定の結果、両者の溶出時間は非常に近い(すなわち流体力学的半径が近い)が、分子量は約2倍であることが確認された。さらに、NMR、IRなどの分析結果を総合すると、かご型高分子が設計通り合成可能であることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H30年度は、相補的反応性末端を有する2種類の4分岐星型ポリエチレンオキシドを希薄水溶液中、カップリング反応することにより、4分岐かご型高分子の生成が確認された。また、その際生成したカップリング反応生成物の中から、かご型高分子を単離するために、α-シクロデキストリン添加による包接錯体形成を利用する方法が非常に有効であることも確認された。これらの結果から、純度の高いかご型高分子の合成方法を見つけることができたと考えられる。さらに、4分岐星型ポリエチレンオキシドの分岐点(中心分子)に対して、分岐点部分を2本の分子鎖へ開裂させる操作を組み込むことにより、かご型高分子からカテナン型高分子への構造変換が可能になると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度はこれまでに得られた知見を活用、進展させることにより、カテナン型高分子を合成する計画である。特に分岐点部分を2本の分子鎖へ開裂させる分子設計として、(1)二重結合を有する中心分子を導入して、これをオゾン処理により分断する方法と、(2)紫外線(および熱)により二量化⇔解離を制御する方法を考えている。さらに、2つの環状高分子からなるカテナン型高分子のみならず、多数の環状分子からなるカテナン型網目の構築にも展開していく予定である。
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