研究実績の概要 |
令和2年度は(1)カテナン型網目構造の構築、および(2)カテナン型高分子の前駆体となるかご型高分子の高収率化を計るための合成方法の検討、を行った。 まず、(1)では、網目構造の構成分子となるアミノ基(NH2)末端、およびN-ヒドロキシコハク酸イミドエステル基(NHS)末端を有する2種類の4分岐星型ポリエチレンオキシド(PEO)の末端官能基導入率を89%までしか上げることができなかった。また、溶液中での2種類の4分岐星型PEOのカップリング反応の末端同士の反応率が70~80%程度のため、末端カップリング反応率が実質的に60~70%程度までしか上げられず、大部分のゲルが崩壊してしまい、目的とするカテナン型網目を得ることはできなかった。 次いで、(2)のNH2末端、およびNHS末端を有する2種類の4分岐星型PEOから希薄溶液中におけるかご型高分子の合成方法の検討においては、水溶液中での反応条件を、THF中での反応に変更した。その結果、これまで0.5%程度の低収率を30%~50%の高収率へ引き上げることができ、飛躍的な収率の向上を達成した。さらに、その条件における末端官能性PEOを用いた相補的カップリング反応を利用して、(1)NHS末端を有する4分岐星型ポリエチレンオキシドとヘキサメチレンジアミン(HMDA)とのカップリングによる「8の字型高分子」の合成、(2)NHS末端を有する両末端反応性PEOとHMDAのカップリングによる「環状高分子」の合成、に対しても応用展開した。その結果、極めて簡便に高収率で環状構造を有する高分子を合成する方法を確立することができた。さらに得られた試料を用いて、希薄溶液中における拡がりを、小角X線散乱(SAXS),動的光散乱(DLS)、固有粘度測定を通して行い、これら一次構造の異なる高分子の希薄溶液中における拡がりの比較を行った。
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