前年度において実施できていなかった、合成したCOF試料の構造解析およびダイナミクス解析に注力した。リチウムイオン(Li+)およびプロトン(H+)イオン伝導を示すイミン結合からなる二次元COFにおいて、高速MAS(80kHz)を用いた1H固体NMR測定を行ったところ、ドーピングしたLi+塩やH+伝導を担う酸がCOFの置換基からみて1nm以下の近傍に存在していることが分かった。またダイナミクスを理解するため、伝導度測定で用いる交流インピーダンス測定の他にラマン分光およびテラヘルツ分光を実施し、COFの構造自体の揺らぎについての検討を行った。Li+伝導やH+伝導を担う分子の導入によりCOFの構造揺らぎは大きく変化し、特にLi塩を導入した際はCOF内部の置換基と強く相互作用することにより、主鎖の揺らぎはより抑えられることが示唆された。一方でH+伝導伝導を担うH3PO4などのキャリアはCOF内部においても高いダイナミクスを保持し、その運動性はある一定のドーピング量に達すると飽和することが分かった。これら成果より、高いイオン伝導性を有するCOFにおいては、適切な(大きすぎない)細孔、ダイナミックな長鎖置換基とドーパントが占有する体積の比率、そしてそれぞれの相互作用が特に効果的に働くことを確認した。
|