研究課題/領域番号 |
18H02033
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大野 工司 京都大学, 化学研究所, 准教授 (00335217)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高分子合成 / 高分子構造・物性 / ナノ材料 / 表面・界面物性 / 自己組織化 |
研究実績の概要 |
本研究は、ポリマーブラシ付与複合微粒子の液晶中における分散および高次構造形成に関して検討するものである。本年度は、先ず、合成面においてメソゲン基を有する液晶性モノマーの共重合体ブラシを付与した微粒子の合成法の確立に取り組んだ。これまでに同系の合成できるポリマーの分子量域は狭く、特に、高分子量体を合成できないことが課題であった。しかし、重合条件の適切な選択によりこれを克服し、分子量数十万のポリマーをグラフトすることに成功した。これにより、液晶の分散および配向特性に対するグラフト鎖分子量依存性をさらに詳細に検討できるようになった。この重合条件は、昨年度より行っている異方性微粒子表面へも適用可能である。特に、ポリマーブラシ付与シリカマイクロロッドを合成し、コア粒子の異方性を反映した液晶の配向挙動、複合粒子の配列挙動が観察でき、球状粒子との比較、混合化など新しい検討課題を生み出した。ポリアルキルメタクリレートブラシ付与シリカ微粒子近傍の液晶(4-cyano-4’-pentylbiphenyl, 5CB)の配向挙動は、側鎖長に大きく依存するが、グラフト鎖長には依存しないことを明らかにした。興味深いことに、C12以上の側鎖を有するブラシに対して5CBはホメオトロピック配向することが分かった。ポリマーと液晶の相互作用を体系化するにあたり重要な結果であるとともに、これを活かした表面設計が期待できる。液晶中の微粒子近傍に発現する液晶の配列欠陥である転傾にポリマーや微粒子を取りこませることに取り組んだ。適切な濃度条件により、転傾にポリマーなどを取りこませることに成功した。また、添加するポリマー濃度により、転傾構造が変化することも新たに分かり、これを利用した微粒子の配列構造制御の可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メソゲン基を有するポリマーブラシ付与複合微粒子のグラフトポリマーの分子量を広範囲に制御できるようになったことは極めて意義深い。これにより、液晶との相互作用を体系化できるのみならず、材料設計という観点からの今後用いることができる技術である。さらに、高圧重合を併用することにも引き続き取り組んでおり、これが達成できればさらに応用範囲を拡げられると期待する。配向欠陥である転傾に物質を導入できる可能性を示すことができたことは意義深い。この際、蛍光標識したポリマーや粒子の導入状態を可視化することにも成功しており、転傾をテンプレートとした材料設計を基礎研究として扱う準備ができた。特に、導入できる物質のサイズ依存性や転傾内でのダイナミクスを検討できると考えている。異方性粒子の高次構造形成も達成しており、各種微粒子の組み合わせにより多彩な高次構造の創製が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね順調に進行しており研究計画の大幅な変更は必要ない。複合微粒子の合成面では、蛍光顕微鏡を用いた評価を計画しているため、ローダミン標識したシリカ微粒子を合成し、それにポリマーブラシを付与することを行う。また、光反応性のポリマーブラシを付与した複合微粒子の合成を行う。例えば、光重合可能なオキセタニル基、シンナモイル基、ビニル基などを付与することを計画する。さらに、刺激応答性官能基として、スピロピラン基、アゾベンゼン基を付与したポリマーブラシの合成を試みる。ポリマーブラシ付与微粒子と液晶との相互作用を検討する際、微粒子表面に特有のものか、または、ポリマーブラシ表面の構造に起因するかを検討するために、平面基板上に付与したポリマーブラシに対する液晶の配向特性、特に、アンカリングエネルギーおよびプレティルト角を決定することを計画している。また、液晶中の転傾にポリマーなどの異種化合物を集積させることに引き続き取り組む。光反応性蛍光ポリマーを合成し、それをサターンリング転傾に集積させた後、光重合することにより転傾をテンプレートとしたナノリングの構築を計画する。また、光反応性微粒子間に生じた転傾に光反応性ポリマーを集積させ光重合により微粒子の鎖状構造の固定化を行う。
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