研究課題/領域番号 |
18H02034
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
浦山 健治 京都工芸繊維大学, 材料化学系, 教授 (20263147)
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研究分担者 |
小椎尾 謙 九州大学, 先導物質化学研究所, 准教授 (20346935)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 液晶 / エラストマー / 液晶エラストマー / レオロジー / ゴム |
研究実績の概要 |
チオールエン反応を利用した等方相架橋によってポリドメイン液晶エラストマー膜(I-PNE)を作製した。試料膜について,平面伸長モードでステップひずみを与え,応力緩和挙動を観察した。前年度までの研究において,同膜は平衡状態においては二軸ひずみの異方性にかかわらず,両方向の真応力が均等化されるという特異性を見出している。この応力緩和測定によって,真応力が均等化される動的プロセスの解明を目指した。 高速でひずみを印加し,印加直後から平衡状態に至るまでの応力の時間変化を調べた。ひずみ印加直後は,工学応力はひずみの大きなx方向の方が大きいが,時間の経過とともに両方向の工学応力の差が小さくなり,長時間領域では両者の大小関係は逆転した。すなわち,ひずみの小さなy方向の工学応力の方が大きくなる状態へ推移した。この工学応力の変化は真応力に換算すると,ひずみ印加直後は,ひずみの大きなx方向の方が大きいが,時間の経過とともに両者の差が小さくなり,長時間後には両者が等しくなる挙動がみられた。 ポリドメイン領域である限り,印加したひずみの大きさに関係なく,定性的には同様の応力緩和挙動が観察された。真応力でみた応力緩和と応力均等化過程は,液晶配向のダイレクタのひずみに対する追随を反映していると考えられる。すなわち,ひずみ印加直後は,ダイレクタがひずみ場に完全に追随していないため,通常のゴムのような応答が優勢となり,真応力の大小関係は通常のゴムと同様になる。時間が経過するに従い,ダイレクタがひずみ場に追随するようになり,ソフト弾性の効果が現れ,両方向の真応力が均等化されていく。 以上の応力緩和挙動からの推論を裏付けるには応力緩和過程のダイレクタの変化を調べる必要がある。次年度では共同研究者と協力し,二軸ひずみ場の応力緩和過程の広角時分割X線散乱測定を行い,液晶配向と応力の時間変化の相関を明確化する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
液晶エラストマーの二軸伸長挙動について平衡挙動についてはおおむね明らかになり,ダイナミクスの研究に移行できているため。
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今後の研究の推進方策 |
二軸ひずみ場の応力緩和過程の広角時分割X線散乱測定を行い,液晶配向と応力の時間変化の相関を明確化する。モノドメイン液晶エラストマー膜の合成に取り組み,ポリドメインとモノドメイン配向膜の二軸伸長挙動の差異を明らかにしていく。
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