研究課題/領域番号 |
18H02036
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
塩野 毅 広島大学, 工学研究科, 教授 (10170846)
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研究分担者 |
中山 祐正 広島大学, 工学研究科, 准教授 (20273576)
田中 亮 広島大学, 工学研究科, 助教 (60640795)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 光学樹脂 / ポリオレフィン / シングルサイト触媒 / シクロオレフィン共重合体 |
研究実績の概要 |
実施者は,本研究においてジメチルシリレン架橋フルオレニルアミドジメチルチタン錯体(I)を適切なスカベンジャー存在下Ph3CB(C6F5)4を活性化剤として0℃でノルボルネンと1-オクテンの共重合を行うと,高活性でリビング的に進行しグラジエントグラジエントコポリマーが得られることを見いだした. 2019年度は,上記触媒系による共重合において,分子量およびコモノマー組成の異なる一連のノルボルネン/1-オクテン共重合体ならびに1-デセンおよび1-デセンとの共重合体を合成し物性を評価した.その結果,いずれの条件においてもグラジエントコポリマーが生成し,1-オクテン組成の増加や1-アルケンの鎖長の増大によりシクロオレフィン共重合体(COC)の欠点である脆性が改善されることを明らかにした.また,開始末端にボロン酸を導入したグラジエントコポリマーを前駆体として星型ポリマーを合成し物性を評価した結果,力学強度が増加することを見いだした. 実施者は,先に,アニリノナフトキノン配位子を有するニッケル錯体(II)をB(C6F5)3や修飾メチルアルミノキサン(MMAO)で活性化した触媒系がノルボルネンのビニル付加型重合に有効であること報告している.そこで,本触媒系を用いた新規COCの合成についても検討した.ノルボルネン/スチレン,ノルボルネン/p-置換スチレン,ノルボルネン/共役ジエンの共重合を行った結果,本触媒系がこれらの共重合の合成に有効であることを示すとともに,これらのコモノマーの組成・種類によってもCOCの物性制御が可能であることを明らかにした.さらに,本触媒系がノルボルネン/ジビニルベンゼン共重合体を高収率で与えることを明らかにし,官能基化COC・グラフト化COCの前駆体として有用であることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究で見いだしたノルボルネン/1-オクテンの高速リビング共重合が進行するチタン系触媒を用い一連のノルボルネン/1-アルケングラジエントポリマーを合成し物性を評価大きくした結果,1-ドデセンなどの長鎖1-アルケンを用いるとシクロオレフィン共重合体の脆性を改善できることを明らかにした.また,星型ポリマーとすることで機械的強度が向上することを見いだした.さらに,当初の計画には含まれていなかったニッケル錯体によるノルボルネンとスチレン,p-置換スチレン,共役ジオレフィンとの共重合についても検討し,共重合触媒としての有効性を明らかにするとともに,共重合体の物性を評価し,新規シクロオレフィン共重合体の可能性を示した.
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの研究において,ノルボルネン/1-アルケングラジエントコポリマーの光学材料としての可能性が明らかになった.今後は逐次重合法によりノルボルネン/1-アルケングラジエント連鎖からなるジブロック,トリブロック,ならびにマルチブロックコポリマー(ランダムコポリマーのモデル)を合成し物性を評価することで,ノルボルネン/1-アルケングラジエントコポリマーの構造と物性の相間関係を明らかにする. また,グラジエントコポリマーはリビング重合により合成しており,ポリマー鎖と当量の錯体を必要とする.モノマー消費後選択的に連鎖移動を起こすことで,グラジエントコポリマーを触媒的に合成する手法についても検討する.
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