研究課題/領域番号 |
18H02038
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
松本 章一 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00183616)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高分子合成 / ラジカル重合 / 高分子反応 / 耐熱性高分子 / 高性能高分子 / ネットワークポリマー / 透明ポリマー / 有機無機ハイブリッド |
研究実績の概要 |
ビニルポリマーがもつ高透明性、高靭性、易加工性などの利点を生かしつつ、さらに重縮合系ポリマーや熱硬化性樹脂に匹敵する耐熱性や高強度を付与するため、ラジカル重合と重付加を融合した新しいポリマー設計が有効である。シークエンス制御が可能なラジカル重合法を活用して、マレイミドポリマーおよびそのオリゴマーの側鎖や末端基に反応性官能基を任意に導入し、得られた反応性ポリマーの架橋反応を利用して、制御された高分子反応によるネットワーク形成を行うと、高耐熱、高透明、高強度、柔軟性、靭性、易加工性などの高機能・高性能を同時に発現可能な耐熱ポリマー材料設計が可能となる。 2020年度の研究進捗状況は以下のとおりである。まず、前年度まで継続して取り組んできたマレイミド、ベンズオキサジン、アリル基を含む反応性モノマーを多官能性チオールと反応することによって構造が明確なビルディングブロックを合成し、熱硬化によって制御された架橋構造を持つネットワークの合成を試みたところ、硬化物は耐熱性に優れた高分子材料が得られることを確認した。さらに着色が認められるものの透明な材料が得られたため、フィルム化を試みたところ、機械強度の改善が必要であることが明らかになった。また、反応性マレイミドポリマーの有機無機ハイブリッド化による高透明・高強度マレイミドポリマーフィルムの作製を行った。その結果、ラジカル共重合によってシークエンス設計したポリマーの側鎖官能基と架橋剤の効率よい反応による材料合成ならびに物性制御が可能であることを結論した。一方、マレイミドポリマー延伸フィルム複屈折や光弾性率を含めた光学特性を評価、屈折率制御材料ならびに特異な複屈折特性をもつ材料の作製に関しては、学外設備の利用や光学材料専門家との協力体制が不可欠であり、今年度は進捗を得ることが難しく、今後も継続検討することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究全体に関しては、当初の計画に沿って概ね順調に進捗している。光学特性評価や一部の材料試験(破壊試験)等については、それぞれ専門家の助言を得て学外の設備等を利用して評価を行う必要があるが、2020年度に関しては学外での実験等を実施することが困難であったため、それ以外の研究項目に注力して研究を推進した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画の最終年度に相当する2021年度の後半には、4年間の研究成果を集約し、積極的にこれまでの成果の外部発表を行うと同時に、超耐熱材料および関連する新規ポリマー材料創製の新たな糸口となりうる研究設計指針を提案し、今後の研究展開への活用を図る。また、昨年度実施が困難であった学外との連携を必要とする実験等についても状況を見ながら可能な範囲で進めて行く。さらに、本研究課題に関する研究を展開する中で、ラジカル重合と重付加型反応の新たな形の融合である共連続ネットワークポリマーの新規合成法を見出したので、2021年度中にそれらの検討も含めて検討を実施し、ラジカル機構により硬化可能なアクリル系熱硬化性樹脂を設計してエポキシネットワークと組み合わせた新規なラジカル重合/重付加融合型の材料設計を行い、今後の展開のための基盤となる基礎研究を進める予定である。
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