研究課題/領域番号 |
18H02050
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
森本 正和 立教大学, 理学部, 教授 (70447126)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | メカノケミストリー / 高分子 / 力学特性 / 蛍光 |
研究実績の概要 |
本研究では、近年研究が活発化しているポリマーメカノケミストリーにおいて、高分子膜への引張応力の印加により発生する高分子鎖結合切断点の空間分布を分子レベルで可視化する新技術を確立することを目的としている。 結合切断点プローブの構築へ向けて、異性化反応により可逆的に蛍光特性を変化させるフォトクロミック分子骨格の合成について検討した。具体的には、多段階の反応を経由することで、重合反応性官能基を導入可能なヒドロキシ基を有するジアリールエテン系フォトクロミック分子を合成した。また、この分子についてスペクトル測定を行うことで蛍光特性を評価した。この分子は有機溶媒中で蛍光を示し、蛍光量子収率は0.4程度の比較的高い値であった。また、この分子は光照射により異性化反応を示し、蛍光強度を変化させるスイッチング挙動を示した。この分子のスイッチング挙動を機械的刺激により誘起することができれば、高分子膜の応力分布を可視化することが可能になると期待される。しかし、現状ではフォトクロミック分子の合成収量が少なく、フォトクロミック分子への重合反応性官能基の導入および高分子の合成には至っていない。各段階の反応収率の向上を試みながら、追加合成を行っている。 また、フォトクロミック分子の合成と並行して、フォトクロミック分子ではない単純な基質を用いて重合反応の予備検討を行った。ヒドロキシ基を有する低分子量有機化合物を出発物質として重合反応性官能基を導入し、それを開始剤とした重合反応により高分子が得られることを確認した。十分な量のフォトクロミック分子を合成できた場合には、この重合方法により、フォトクロミック分子へ高分子鎖を導入する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の想定では、本年度中にフォトクロミック分子骨格を有する結合切断点プローブを含む高分子を合成し、光および機械的刺激に対する高分子の応答性の観測に着手したいと考えていた。フォトクロミック分子を合成することはできたものの、その途中段階であるアリール環のハロゲン化などの反応収率が低いためにフォトクロミック分子の収量が少なく、高分子の合成と応答性の観測に取り組めていない。よって、現在までの進捗状況としては「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
各段階の反応収率の向上を試みながら、重合反応やその後の各種測定に必要な量のフォトクロミック分子を合成することを目指す。具体的には、アリール環のハロゲン化などの反応で用いる試薬や溶媒などの条件を検討する。十分な量のフォトクロミック分子を合成したあと、その分子を用いた重合反応により高分子を合成し、光および機械的刺激に対する高分子の応答性の評価を行う。
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