研究実績の概要 |
無機系の脱水縮合や、有機系のリビングラジカル重合など、分子量分布の狭い状態でゾル-ゲル転移を起こす多数の系において、重合誘起相分離によるマクロ多相構造の自発的形成と、そのゲル化による空間的凍結に基づき、高度に制御された階層的多孔構造材料が得られる。同原理を金属イオン-有機配位子間の配位結合形成に基づく金属誘起構造体(MOF)系に適用し、構造制御を可能とする反応パラメーターを明らかにする研究の最終年度である。 過年度に作製し詳細な解析を行ったアミノテレフタル酸-ジルコニウムによるUiO-66型MOFを基盤として、クロムおよびジルコニウムを中心金属とし、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸(btc)を配位子とするMOFについて、階層的多孔構造の制御を試みた。溶媒組成としてテトラヒドロフラン/エタノールを、相分離誘起剤としてポリ(プロピレングリコール)を用いることにより、クロムについてはMIL-100(Cr)に、ジルコニウムについてはMOF-808に対応する、マイクロメートル領域の連続孔と、MOF構造に由来するナノメートル領域のメソ孔を併せもつ、塊状非晶質ゲル試料が得られた。各々の階層的多孔構造ゲルは、対応するMOF結晶と同程度のメソ孔直径をもち、短距離構造がそれぞれの結晶性MOFに良く対応することが分かった。また塊状非晶質ゲルを粉砕・分級することにより、マクロ-メソ孔構造の均一性を維持したまま、吸着等の担体材料として利用しやすい充填カラム形状に加工できることを確認した。
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