研究課題
本研究では、岩塩型Li-Ti系酸窒化物LiTinOxNy(LTON)に着目し、平成30年度の研究において最も放電容量が大きいことが明らかになった(Ti+Ta)/Li=1.25のLTONに、Li4Ti5O12において4価のTiサイトに、特に高電流条件での性能が改善されることが報告されている5価のTaをドープすることで負極特性の向上を試みた。またIn-situ XRD測定により充放電中の結晶構造解析を行い、従来の負極材料の充放電挙動との比較を行った。XRDにおいてTaのドープ量が15%までは単一相が得られた。Ta量の増加に伴ってa軸長がおおよそ単調増加し、また酸素窒素同時分析より、複合アニオン中の窒素比(N/O)に関しても増加傾向を示すことが明らかとなった。格子定数の増大はTa5+(0.64Å)が一部のTi4+(0.61Å)サイトを占有したことやN3-(1.46Å)とO2-(1.38Å)の複合アニオンにおけるN3-の存在割合が増加したことに起因すると考えられる。窒素比の増加に関しては、Taドープによる正電荷の増加に対して電気的中性を保つために窒素の導入が促進された可能性がある。5サイクルごとに電流条件を変化させたレート特性試験を行った結果、Taドープ量の増加に伴って充放電特性が向上する傾向が観測された。特にTaドープ量15%の試料が放電容量204.8 mAh g-1を示し、さらに全ての電流条件で最良の特性が得られた。In-situ XRDの結果より、Taドープ量10%のLTON活物質 1 molに対して約0.41 molのリチウムイオンが挿入されることが分かった。即ち、Li挿入前のLiに対する(Ti + Ta)比は3.92 : 5、一方でLi挿入後は7.08 : 5となり、この値はLi4Ti5O12の示すLi挿入反応によく対応することが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
上記の酸窒化物電極材料に関する成果だけでなく、複数の蛍光体を用いるため、経年劣化によるLEDおよび各蛍光体の発光強度差から生じる「色ずれ」が問題となっている白色LED用蛍光体の代替材料として、励起光として320 nmの紫外線を用いるCa1.4Ba0.6Si5O3N6:Eu2+蛍光体を提案することに成功した。この蛍光体は2種類のEu2+が占有する発光中心があるが、それぞれの発光中心から青色光と黄色光を出しこれらの発光色が互いに補色となっているため白色光として感知される。また、Ta系酸窒化物光触媒についても、酸窒化物光触媒の最大の弱点であるアニオン欠陥が正孔と電子の再結合中心となって触媒活性が低下する現象を抑えるため、逆オパール構造を形成してフォトニックバンドギャップを持たせることに成功した。以上のようにそれぞれの分野での(国際会議)論文を含む学会発表を完了し、現在学術論文執筆を行っているところであるため概ね順調に進展していると判断した。
可視光照射により水の完全分解を成し得る光触媒活性を有するTaONおよびTa3N5光触媒材料をベースとした逆オパール構造を代表とするフォトニック結晶を作成し、(酸)窒化物で触媒活性低下の一因となるアニオン欠損での正孔・電子再結合の抑止効果が発現するかどうか検証を行う。また、密度汎関数法を用いた材料設計にも注力していきたい。例えば、顔料としてあるいは可視光応答光触媒として期待されているSrTaO2NやSr2TaO3N構造中に存在するTa(O,N)6八面体のNのcis型配位についてX線構造解析、X線吸収微細構造測定を行うとともにCASTEPを用いたX線吸収微細構造中に現れるXANESスペクトルのシミュレーション結果からその妥当性を検証する。更に、先に述べたCa1.4Ba0.6Si5O3N6:Eu2+蛍光体の2つの発光中心からの発光特性のシミュレーションを行い、Ba/Ca比、O/N比の最適化を行って白色蛍光体としての完成度を向上させる。
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