研究課題/領域番号 |
18H02060
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
森口 勇 長崎大学, 工学研究科, 教授 (40210158)
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研究分担者 |
瓜田 幸幾 長崎大学, 工学研究科, 助教 (40567666)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ナノ多孔カーボン / Liイオン電池 / 全固体電池 / コンバージョン反応 / 合金・脱合金反応 / 酸化スズ / 硫化スズ / リン |
研究実績の概要 |
本研究では,カーボンナノ空間におけるコンバージョン反応や合金・脱合金化反応の反応過程を解明し,充放電機能向上に向けた構造最適化を図るとともに,有機電解液系Liイオン電池のみならず全固体電池電極材料としての可能性や特長の解明を目指している。 これまでの研究において,シリカコロイド結晶テンプレート法を利用してメゾ~マクロ領域の細孔サイズを有するナノ多孔カーボンをまず合成し,次いでSnやS, P源を気相導入することにより,SnO2やSnS2, P活物質の析出担持を試みた。X線回折,元素分析,熱重量分析,ガス吸着等温線測定による比表面積や細孔分布分析,走査型および透過型電子顕微鏡観察の各種分析・評価を通して,カーボンナノ細孔内に各活物質が優先析出した活物質/ナノ多孔カーボン複合体が合成できることを明らかにした。 Li塩有機電解液系において,活物質/ナノ多孔カーボン複合体電極のサイクリックボルタンメトリーおよび定電流充放電測定を行い,いずれの活物質複合系においても,活物質・アセチレンブラック単純混合系よりも高容量が発現し,またサイクル安定性に優れることがわかった。 SnO2/ナノ多孔カーボン複合体系においては,硫化物系固体電解質を用いて全固体電池電極としての充放電特性も評価した。有機電解液系と異なり固体電解質が細孔内に存在しないにもかかわらず安定な充放電が観測され,緻密な活物質電極で,かつ空隙のない接触界面が要求されてきた全固体電池の既往研究とは異なる新しい電極系を開発することに成功した。さらに,MnNiCo系酸化物を正極材料として全固体電池プロトタイプの充放電特性を評価したところ,高エネルギー密度を安定に発現できるデバイスとして期待できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画通りにナノ複合材料合成,構造評価,有機電解液での充放電特性評価を行っている。さらに,一部の複合体については,本課題研究期間の後半で予定していた全固体電池としての応用に関する基本的な充放電特性の評価も行い,全固体電池電極材料として期待されることを明らかにし,当初の予定以上に大きく研究が進展した。
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今後の研究の推進方策 |
様々な活物質/ナノ多孔カーボン複合体について有機電解液系および固体電解質系での充放電特性を比較評価し,系統的構造パラメータとの相関性,電解質の種類の影響等を明らかにする。さらに,電極中,特に電極を構成するカーボンナノ空間内におけるナノ活物質とLiイオンの反応過程を電子顕微鏡観察,特にSTEM分析等により追跡し,その特異性やLi拡散メカニズム等を明らかにする。これらの結果を材料構造および電極設計にフィードバックし,高容量発現,反応可逆性(サイクル安定性)やレート特性の向上を図る。
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