研究課題/領域番号 |
18H02062
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
菅原 義之 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50196698)
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研究分担者 |
塚原 剛彦 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (10401126)
井戸田 直和 法政大学, 生命科学部, 講師 (60451796)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マイクロリアクター / 表面修飾 / ナノ粒子 / ナノシート |
研究実績の概要 |
金属酸化物ナノ材料は,金属酸化物が有する特性を付与できることに加えて可視光を散乱しないことから,有機高分子を用いた有機-無機ハイブリッド材料のナノフィラーとして広く検討されいる.有機高分子マトリクス中での高分散を達成するためには,表面修飾により有機官能基を金属酸化物ナノ材料の表面に固定化する手法が有効である.そこで本研究では,効率的な金属酸化物ナノ粒子・ナノシートの表面修飾法として,マイクロリアクターを用いた二相流による表面修飾法の開発を目的としている. 2019年度は,マイクロリアクターを用いたナノシートの表面修飾を達成した.ナノシートは2層構造のニオブ酸であるイオン交換性層状ペロブスカイト(HLaNb2O7・xH2O,HLaNb)を水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液中で剥離させて作製し,この分散液のpHを4に調製したものを水相として用いた.一方,有機相としては,リン酸オレイルを溶解したシクロヘキサンを用いた.ダブルY型マイクロ流路で二相流を形成させ,ナノシートの表面修飾を試みたところ,2液が接触している4.6秒の間に89.4%のナノシートが水相から有機相に移動し、有機相から回収した生成物の赤外吸光分光分析と固体高分解能核磁気共鳴分光分析の結果から,ナノシートの表面にリン酸オレイル基が固定されていることがわかった.比較実験として,同じ水相15 mLとシクロヘキサン相15 mLから構成される液-液二相系を用い,内径2.8 cmのガラス瓶でゆっくり撹拌しながら表面修飾を行ったところ,4時間後で 35.1%のナノシートが,7時間後で 97.6%のナノシートが表面修飾されて水相からシクロヘキサン相に移動していた.以上より,マイクロリアクターに形成させた二相流を用いることにより,ガラス瓶中の液-液二相系に比べて極めて高効率で表面修飾が実現できることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は,2018年度の成果である,テトラブチルアンモニウムイオンが表面を覆っているHLaNbナノシートの水分散液とリン酸オレイルを溶解したシクロヘキサンを用いた液-液二相系の成果を展開し,マイクロリアクターにおける二相流を用いた表面修飾で,非常に短時間で表面修飾が完了することを見出した.この成果は,本研究の目的の1つである,マイクロリアクターを用いた金属酸化物ナノシートの高効率な表面修飾を実証していることから,本研究課題はおおむね順調に進展していると判斷している.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は,金属酸化物ナノ粒子に関して,マイクロリアクターを用いた表面修飾の実現を目指す.金属酸化物ナノ粒子の組成と粒径,表面修飾剤と溶媒の選択,金属酸化物ナノ粒子水分散液と表面修飾剤溶液の濃度を変化させて実験を行うとともに,二相流形成条件の探索を実施する.また,必要に応じて,マイクロリアクターであるマイクロ流路の最適化を実施する.これらの条件探索と最適化により,金属酸化物ナノ粒子の高効率な表面修飾技術の確立を目指す.
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