研究課題/領域番号 |
18H02063
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
幸塚 広光 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (80178219)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ガラス / 非晶質 / 金属オキソオリゴマー / キレート剤 / アルコキシド / 透光性 / 熱可塑性 / 配位多面体 |
研究実績の概要 |
金属源としてチタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、酢酸亜鉛、酢酸ランタンを取り上げ、キレート剤として種々のβ-ジケトン、α-ジケトン、β-ケトエステル、アルカノールアミン、カルボン酸、無水カルボン酸を取り上げ、これら金属源と金属塩を含有する溶液を濃縮・乾固し、透明で熱可塑性をもつ乾固体が得られるかどうかを調べた。ただし、アルコキシドを金属塩とする場合にはアルコキシドを加水分解するための水を溶液に加えた。その結果、ベンゾイルアセトン(β-ジケトン)、ベンジル(α-ジケトン)、エチルベンゾイルアセテート(β-ケトエステル)をキレート剤とすることにより黄色透明な乾固体が得られること、そのうち、β-ジケトンをキレート剤とする乾固体が熱可塑性をもつことがわかった。光学的応用のためには乾固体が無色であることが望ましいが、アルカノールアミンをキレート剤として得られる乾固体は無色透明であるものの、大気中で容易に液化してしまった。一方、無水コハク酸と無水フタル酸をキレート剤とすることにより、無色透明で熱可塑性をもつ乾固体が得られることがわかった。 無水コハク酸と無水フタル酸をキレート剤とし、チタンアルコキシドを金属源として得られる乾固体では、加水分解・濃縮・乾燥の過程で、カルボキシレートイオンがチタン原子にキレート配位またはブリッジ配位していることが赤外吸収スペクトル測定によりわかった。無水コハク酸、無水フタル酸の対チタンモル比が1という条件のもとで作製した乾固体の屈折率は、それぞれ1.65、1.68であり、無水フタル酸の対チタンモル比を0.5まで下げると屈折率は1.73まで高くなることがわかった。 以上のように、種々の金属源とキレート剤について検討を加えることにより、熱可塑性をもつ透明で熱可塑性をもつ非晶質が得られる条件、さらには、無色透明な非晶質体が得られる例が集まり始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的の第一は、新しいガラス材料群としての金属オキソオリゴマー集合体の本性を学術的に把握するために(i)「金属オキソオリゴマー集合体がガラスとして生成する化学的条件」を明らかにし、(ii)得られたガラスのガラス転移温度、構造を調べ、「ガラス生成と構造の関係」「ガラス転移温度と構造の関係」を明らかにすることにある。目的の第二は、実用材料・機能材料としての可能性を探るために、(iii) 得られたガラスについて「力学的・化学的耐久性」を明らかにするとともに、「成形可能な温度領域」を調べ、(iv)「特異な物性の有無」について明らかにすることにある。「(i)金属オキソオリゴマー集合体がガラスとして生成する化学的条件」を明らかにするためには多種類の金属源とキレート剤の組み合わせについて検討を加える必要があったが、2018年度の研究により、多種類の組み合わせについて検討を加えることができ、熱可塑性をもつ透明非晶質体が得られる条件だけでなく、無色透明で熱可塑性をもつ非晶質体が得られる条件も見出すことができた。無色透明な非晶質体が得られたことは、第二の目的の一つである「(iv)特異な物性の有無」にかかわる事柄として、光学材料としての応用の道を拓く成果であるともいえる。
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今後の研究の推進方策 |
上記で述べた目的のうち、(i)「金属オキソオリゴマー集合体がガラスとして生成する化学的条件」について、2018年度の研究によりかなりのことがらを明らかにすることができた。今後は、 (ii)得られた非晶質体のガラス転移温度、構造を調べ、「ガラス生成と構造の関係」「ガラス転移温度と構造の関係」を明らかにするとともに、(iii) 得られた非晶質体について「力学的・化学的耐久性」を明らかにするとともに、「成形可能な温度領域」を調べ、(iv)「特異な物性の有無」について明らかにする。
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