研究課題/領域番号 |
18H02063
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
幸塚 広光 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (80178219)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ガラス転移 / 有機・無機ハイブリッド / 錯体 / 金属オキソクラスター / 熱可塑性 / 屈折率 / 非晶質 / ゾル-ゲル法 |
研究実績の概要 |
本研究は、キレート剤により化学修飾された金属オキソオリゴマーからなる透明なガラス材料群の本性を学術的に把握するとともに、常温近い温度で成形可能な新しい機能材料としての可能性を探るものである。2019年度は、キレート剤を含有する金属アルコキシド溶液または金属塩溶液から合成される非晶質材料がガラス転移を示すことを、熱膨張測定と熱分析により明らかにした。ガラス転移が認められた非晶質材料を、酸化物とキレート剤の組み合わせで書くと、以下の通りである。ZrO2-ヘキサヒドロフタル酸無水物、ZnO-ベンゾイルアセトン、ZrO2-ベンゾイルアセトン、ZrO2-ベンゾイル酢酸エチル、TiO2-無水フタル酸、TiO2-無水コハク酸、TiO2-ベンゾイルアセトン。ガラス転移を示すベンゾイルアセトン修飾チタンオキソオリゴマー集合体については、X線回折と二体分布関数による解析により、チタン・酸素配位多面体の構造と配位多面体の連結構造を明らかにした論文を国際的な学術雑誌に掲載することができた。 また、フタル酸修飾チタンオキソオリゴマー集合体について、(1)軟化温度とガラス転移温度、(2)屈折率、(3)耐水性に及ぼす①フタル酸量、②乾燥温度・時間の効果を調べ、フタル酸量の減少、乾燥温度・時間の増加とともにガラス転移温度・軟化温度が上昇すること、フタル酸量の減少、乾燥温度の上昇とともに屈折率が上昇すること、乾燥温度の上昇とともに耐水性が向上することを明らかににした。 一方、フタル酸修飾チタンオキソオリゴマー集合体の硬さに及ぼすUV・オゾン処理やフィラーとしてのコロイダルシリカの導入の効果を調べたが、いずれによっても硬さが増大することはなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、化学修飾された金属オキソオリゴマーからなる透明なガラス材料群の本性を学術的に把握するために(1)「金属オキソオリゴマー集合体がガラスとして生成する化学的条件」を明らかにし、(2)「ガラス生成と構造の関係」「ガラス転移温度と構造の関係」を明らかにするとともに、実用材としての可能性を探るべく、(3)得られたガラスについて「力学的・化学的耐久性」を明らかにし、(4)「特異な物性の有無」についても明らかにすることを目的としている。「研究実績の概要」において述べたように、多種類の金属オキソオリゴマー集合体がガラスとして生成することを実証することができ、前述の項目(1)と(2)について、概ね研究が順調に進みつつある。「研究実績の概要」において述べたように、前述の項目(3)(「力学的・化学的耐久性」)について、一部検討を進めているが、耐久性を向上させるための別の方策を提案する必要がある。前述の項目(4)(「特異な物性の有無」)については、項目(3)の条件探索のなかで見つかることを期待している。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度はコロイダルシリカの代わりに有機高分子の添加が硬さの増加をもたらすことを期待し、その効果を調べる。また、耐水性に及ぼす効果も調べる。さらに、チタン以外の金属とフタル酸の組み合わせによるガラス生成の可能性と、チタンとフタル酸以外のキレート剤の組み合わせにより生成するガラスについて、(1)軟化温度とガラス転移温度、(2)屈折率、(3)耐水性、(4)硬さに及ぼす①キレート剤量、②乾燥温度・時間の効果を調べ、フタル酸修飾チタンオキソオリゴマー集合体に見られたのと同様の効果が見られるか、さらに、より屈折率が高く、硬さと耐水性に優れた材料が得られるかどうかを明らかにする。
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