研究課題/領域番号 |
18H02064
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
井出 裕介 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主任研究員 (40449327)
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研究分担者 |
冨中 悟史 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主任研究員 (90468869)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 層状ケイ酸塩 / マガディアイト / 光触媒 / 化成品合成 |
研究実績の概要 |
マガディアイトは天然にも産出し,合成が非常に容易なこともあり,イオン交換体や吸着材,触媒(およびそらの担体)として最も頻繁に研究されている層状ケイ酸塩であるが,構造が不明だったため,物性(特に吸着)に関しては謎めいた点も多かった。 フェノールに代表される大型化学品から,医農薬品等ファインケミカルまで,化学品を現行法(概して高温を要する)に比べて少しでもグリーンなプロセスで合成する試みが世界中で活発に研究されている。光触媒による有機物の部分酸化は,太陽光と酸素(あるいは水)だけで駆動するため究極のグリーンプロセスの一つであり,水の分解や有機物の分解無害化と共に,光触媒研究の草創期から研究されてきた。しかし,光触媒による有機物の分解(CO2への完全酸化)が実用化されていることからも良く分るように,有機物の酸化を狙った段階で止めることは非常に困難であり,副生物への逐次酸化が起きてしまう。様々な光触媒が開発されているものの,部分酸化物を高収率かつ高選択的に合成できた例は殆どなかった。 我々は,本研究において,X線PDF分析およびリートベルト解析によるマガディアイトの構造解析に成功し,同層状ケイ酸塩が“層内”に8員環ミクロチャンネルをもつことを発見した。この細孔には,8員環ゼオライトのそれには取り込まれない芳香族化合物も吸着し,特に,トルエンとその部分酸化物の混合物から工業的に重要な安息香酸のみがフィットし吸着した。そこでTiO2によってトルエンを酸化させる光触媒系にマガディアイトを組み込んだところ,期待通り,100%純度の安息香酸を大容量(mmolスケール)に合成できた。トルエンの酸化によって,ベンジルアルコール等の中間体を経て生成する安息香酸が,生成後即マガディアイトへ分離蓄積され,同分子およびその逐次酸化物がTiO2表面に堆積することによる触媒劣化が抑制される機構を提唱できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、マガディアイトの構造解析に成功し、他の代表的な多孔体(ゼオライトや有機金属構造体、MOF)に比べ、ユニークなミクロ細孔を有することを発見した。実際にこの細孔を利用して、従来のゼオライトでは不可能な分子認識を達成することもできた。
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今後の研究の推進方策 |
マガディアイトの層内のミクロ細孔が、ゼオライトと異なる形状とサイズをもつことは証明できた。一方、その細孔がMOFのように「柔軟」であるかに関しては、現在保有している構造解析データ(計算)からも強く示唆されるものの、実験的な証明には至っていない。今後はこの点をより明確にすると共に、マガディアイトの更なる吸着機能の向上、応用の拡大を図る。
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