研究課題/領域番号 |
18H02067
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
雨澤 浩史 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (90263136)
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研究分担者 |
井口 史匡 東北大学, 工学研究科, 准教授 (00361113)
八代 圭司 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (20323107)
中村 崇司 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (20643232)
木村 勇太 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (60774081)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 固体酸化物形燃料電池 / 空気極 / 混合導電性酸化物 / 反応経路 / パターン電極 / オペランド計測 |
研究実績の概要 |
燃料電池空気極に代表される高温ガス電極における反応場(二相/三相界面反応)・およびそれらの反応量を定量的に分離評価し,電極反応活性の起源を明らかにすることを目的とした。高温ガス電極のモデル材料として,前年度に引き続き、酸化物イオン-電子混合導電体La0.6Sr0.4CoO3-d(LSC)を対象とした。前年度は,電解質に酸化物イオン導電体Ce0.9Gd0.1O1.95(GDC)を電解質に用いた系を検討したが,今年度は,これらをコンポジット化することの効果について検討した。電極反応特性および機構評価には,三相界面を持つ/持たないパターン緻密膜モデル電極を作製し,これらに対し,電気化学測定,オペランドマイクロX線吸収分光測定を実施することで行った。これらの測定の結果,500~700℃では,電極/電解質材料のコンポジット化により,電極特性が向上することが確認された。この傾向は,特に低温,高酸素分圧条件になるほど,顕著であった。この結果は,電解質材料とのコンポジット化により,電極内の酸化物イオン伝導が促進され,電極反応場が拡張したことによると考えられた。一方,今年度は新たな電極系として,電極にLSC,電解質にプロトン導電体BaZr0.8Yb0.2O3-d(BZYb)を用いた電極系についても検討を開始した。その結果,この電極系では,二相界面反応(電極表面反応+電極バルク内拡散)も一定量反応に寄与はするものの、三相界面反応が主たる反応であることが明らかとされた。この結果は,プロトン伝導性セラミックス燃料電池の空気極における反応経路を実験的に明らかにした初めての結果である。電解質にBZYbを用いて得られた結果は,GDCを用いた得られた結果(前年度成果)とは大きく異なった。これより,電極材料が同じであっても,電解質における電荷担体種が異なれば,その電極反応機構は大きく異なることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究では,前年度までに研究代表者等によって確立されたパターン緻密膜モデル電極の作製技術およびそれらを用いた電気化学・各種高度オペランド計測による反応解析 技術を,種々の高温ガス電極に適用することを計画していた。このためのモデルケースとして,前年度に検討した①酸化物イオン導電性GDC電解質上の混合導電性LSC電極,に加え,②酸化物イオン導電性GDC電解質上のLSC/GDCコンポジット電極(SOFC空気極),③プロトン導電性BZYb電解質上のLSC電極(PCFC空気極),を新たな検討対象に選び,これらの電極系の反応解析を実施した。これらの電極系に対し,三相界面を持つ/持たないパターン緻密膜モデル電極を作製し,これらの電気化学測定,オペランドマイクロX線吸収分光測定により,二相および三相界面反応が電極特性および電極反応場形成に及ぼす影響をそれぞれ分離して評価することに成功した。以上で述べた通り,本研究は当初の予定通り,おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究では,GDC電解質上のLSC/GDCコンポジット電極,BZYb電解質上のLSC電極をモデルケースに,高温ガス電極であるSOFCならびにPCFC空気極における反応解析を実施した。前年度までに確立されたパターン緻密膜モデル電極と電気化学/高度オペランド計測の併用による反応解析手法を適用することにより,これらの空気極における反応機構を明らかにすることができた。次年度は,今年度までに得られた手法ならびに高温ガス電極反応に関する知見をさらに活用し,他の電極系の反応解析へと展開する。 今年度までの研究において,SOFC混合導電性空気極,SOFCコンポジット空気極,PCFC電子導電性空気極について,反応解析を実施してきた。次年度は,電極系の対象をさらに拡張することを計画している。具体的には,SOFC混合導電性空気極における表面修飾効果,PCFC混合導電性空気極,PCFCコンポジット電極などについて検討する。さらに,研究代表者等の独自技術であるパターン緻密膜モデル電極を,燃料電池空気極の劣化挙動解析へと展開することも検討する。 以上の研究を通し,SOFC空気極やPCFC空気極に代表される高温ガス電極における反応の系統的理解を達成するとともに,高温ガス電極における反応活性,安定性などを左右する因子を明らかにし,高性能電極の電極設計・開発指針を提示する。
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