研究課題
水は自然界に最も豊富に存在する電子源であり、水素製造ならびに二酸化炭素還元による物質合成を担う重要な化学資源と言える。しかし、水から電子を獲得する反応、すなわち酸素発生反応に対して、優れた活性と安定性を持つ触媒は、Irなどの希少金属のみであり、Mnなど豊富に存在する元素を用いた触媒の開発が強く望まれている。同課題の解決するための方法論として、本研究では、「構造歪みの導入によるMn3+イオンの不均化反応に対する安定性の向上」を設計指針として提案している。具体的には、Mn酸化物に構造歪みを導入する手法として、数あるマンガン酸化物結晶相の中でも、構造歪みの精密制御が可能であり、Microtwinning構造を有するガンマ型MnO2を主要な触媒材料として検討を進めてきた。温度可変の電解合成システムを用い、90 ℃以上の温度で電析することで、効率的に構造歪を導入できることを見出した。得られた触媒は、通常の酸化マンガンより大きい構造歪みを有し、オペランド紫外可視、Raman分光、そしてX線吸収分光により過マンガン酸イオンの溶出電位が大きく正にシフトしていることを確認した。また、構造歪みの導入に伴いMn3+の不均化反応が抑制され、酸素発生の過電圧が減少することを確認し。以上は、本研究の設計指針の有効性を示す成果である。そして、酸性環境で高活性かつ安定的に動作する触媒の開発が求められる固体高分子型水電解においても、イリジウムなどの希少元素を置き換えるための新たな設計指針を提供するものである。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nat. Catal
巻: 5 ページ: 109-118
10.1038/s41929-021-00732-9