研究課題
配位子L(L=5-phenyl-2,8-dicarboxy-anthyridine)と2.5等量のRu(tpy)Cl3(tpy = 2,2’:6’,2’’- terpyridine)を反応させたところ、錯形成反応と同時に配位子Lの構造変換が進行し、カルボキシ基の一つがヒドロキシ基に置換された二核錯体enol-RuII2(μ-OH)が得られた。1H NMRとUV-Visスペクトル測定から、enol-RuII2(μ-OH)は塩基性水溶液中において二電子酸化を伴う脱プロトン反応を受けて、可逆的にketo-RuIII2(μ-O)へと変化することが示された。さらに、keto-RuIII2(μ-O)の単結晶X線構造解析によって、アンチリジノン骨格の2および3位の窒素原子が一つのRuに配位した特異的な二核構造を有していることが示された。keto-RuIII2(μ-O)の水溶液中におけるサイクリックボルタモグラムでは、1.53V vs. RHEから水の酸化に由来する触媒電流が観測され、水の酸化過電圧は290 mVとそれぞれ見積もられた。このように、keto型の二核錯体が高い触媒活性と安定性を有することを見出した。
2: おおむね順調に進展している
これまで、触媒の活性と安定性の向上が課題であったが、配位子Lを用いて合成することにより、非常に安定かつ活性な二核ルテニウム錯体の合成に成功した。この錯体を用いることにより、今後研究が大きく進展すると期待される。
今後、配位子Lを有する二核ルテニウム錯体enol-RuII2(μ-OH)の単結晶構造解析を行う予定である。さらに、水の酸化触媒機構を明らかにすると共に、その重要因子を明らかにする。
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