研究課題/領域番号 |
18H02072
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
細野 暢彦 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 講師 (00612160)
|
研究分担者 |
山田 秀尚 公益財団法人地球環境産業技術研究機構, その他部局等, 主任研究員 (60446408)
梶原 隆史 京都大学, 高等研究院, 研究員 (80422799)
日下 心平 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (80749995)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 多孔性金属錯体 / 多孔性配位高分子 / 分離膜 / 触媒 / 分離 / カラムクロマトグラフィー / CO2固定 |
研究実績の概要 |
本研究は、膜材料を分子レベルから総合的にデザインすることで、気体を分離し、同時に変換する新しい高分子膜材料を造り出す方法論を開発するものである。分離変換機能団として、選択的ガス捕集性かつ触媒機能を併せ持つ多孔性配位高分子(MOF)および中空有機金属錯体(MOC)を利用する。これらMOF/MOCを、生体膜を模倣するような分子変換チャネルとして見立て、これまでにないナノ空間機能を有する膜材料として完成させることを目的としている。 本研究は、それぞれの分担研究者が、A:MOFおよびMOC開発および膜との融合化手法開発、B:MOFのサイズ及び形態制御、C:MOFを反応場とした物質変換触媒開発の3つの課題に取り組み、それぞれの研究で得た成果を融合させてゆく形で進めている。 本年度は特にテーマCについて大きな進展があった。MOFの構造および金属配位不飽和サイト(活性部位)の戦略的設計により二酸化炭素を高効率かつ高選択的に有用な化学物質へと変換させるMOF触媒の開発に成功した。本触媒は、従来の同様の触媒に比べて10倍以上の変換効率を有することが明らかとなった。さらに、本課題でMOFによる分子分離を研究する過程において、MOFがガス分子等の小分子だけでなく、巨大な高分子の分離にも威力を発揮することを突き止めた。試験的にMOF粒子を充填したカラムを作成し、末端が異なる数種の高分子鎖のクロマトグラフィー分離を試験したところ、MOFが高分子鎖の末端構造を認識した結果、極めて精密にそれらの高分子を分離させることができることを見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は概ね順調に進展している。本年度はテーマAおよびテーマCについて大きな進展があった。テーマCのMOF触媒開発においては、MOF内部の細孔構造および触媒活性サイトの緻密な設計により、二酸化炭素を有用な化成品原料となるエポキシドに変換する新材料の合成に成功した。本材料は、従来の同様のMOF触媒に対して10倍以上もの性能向上を示すことを見出した。本成果はNature Communicatinosに掲載された。一方で、MOFを用いた物質分離に関する全く新しい発見もあった。これまでは専らガス分子等の小分子を分離対象として研究を推進していたが、MOFが小分子だけでなく、高分子化合物の構造も認識し、分離することが可能であることを見出した。実際にMOFを固定相としたカラムを試作し、MOFの高分子分離機能を実証することに成功している。今後、本研究の視野を更に広げるため、高分子化合物も分離対象として研究を展開させる予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでのMOFを含めた多孔体による物質分離は、ほとんどがガス分子等の小分子の分離を目的としており、高分子を対象としたものはなかった。しかし本研究で、MOFの細孔内部には、高分子鎖も容易に入り得ることがわかり、結果としてMOFにより高分子鎖の構造の認識が起こり、分離が可能であることが示された。これは、これまでのMOFを含めた多孔体化学分野において極めて重要な発見である。したがって、今後の研究では分離対象の物質に高分子化合物も含めることとし、分離試験だけでなく、高分子の構造を認識するためのエッセンスを探るべく基礎的な原理も含めて新たに研究を始める。 また、テーマAのMOF開発における問題点として、分子を精密に識別する方法に画一した設計指針がないことが挙げられる。本問題について、次年度はある典型的なMOFに着目して、当MOFが分子を識別する機構を計算化学的手法も取り入れて詳細に研究し、そのエッセンスを明らかにする予定である。
|