研究課題/領域番号 |
18H02073
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中西 周次 大阪大学, 太陽エネルギー化学研究センター, 教授 (40333447)
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研究分担者 |
松田 翔一 国立研究開発法人物質・材料研究機構, エネルギー・環境材料研究拠点, 主任研究員 (30759717)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | リチウム空気電池 |
研究実績の概要 |
非水系リチウム空気電池においては、放電生成物として電子伝導性の低いLi2O2が正極上に形成されることが原因で、理論的に期待される大きな放電容量が得られていない。しかし、申請者は、反応中間体の正極への吸着特性が使用する電解質溶液と陽極基材の「組合せ」に強く依存し、好適な組合せの場合には、Li2O2の形成機構の変化を伴って充放電容量が飛躍的に向上することを見出してきた。本研究では、この発見を手がかりにLi2O2の形成機構を解明し、リチウム空気電池の放電容量向上のための基本設計指針を得ることを目的としている。 2018年度は、放電反応中間体の吸着特性を変調させることを企図し、正極として使用するカーボン材料の表面修飾の放電容量に対する効果を検証した。カーボンペーパーを三水溶液に浸漬することで、その表面に酸化欠陥を導入した。酸素欠陥の導入はXPSによる酸素含有官能基の増加により検証した。こうした表面処理を施した正極を利用した場合には、放電容量が飛躍的に向上することが認められた。より具体的には、表面処理を施していない正極を使用した場合には放電が進まない低過電圧領域においても、正極表面の酸化処理により高過電圧条件と同等の放電容量を得ることが確認された(Chem. Lett., 2019, 48, 562)。この結果は、放電反応のキー中間体の吸着特性が変化したことに起因すると推察される。このような結果を受けて、ラマン分光法を利用した放電反応機構の解明、およびハイスループット評価システムを活用したより高容量を導く電解液/添加剤の探索にも着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
反応中間体の吸着状態の制御ひいては電池の高容量化を企図して、正極表面の修飾を行った。その結果、当初の期待を超える飛躍的な高容量化が実現された。この成果を元に現象の理解が進み、研究が大きく加速された。 一方、ラマン分光法を利用した評価システム構築に関しては、当初の予定に反し、電気化学セルに特殊な構造的工夫が必要であることが判明した。この特殊セルの詳細な仕様確定のために予定より多くの時間を費やすことを余儀なくされた。 ハイスループット評価システムを活用した添加剤探索に関しては、順調にデータ蓄積が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、正極表面修飾による飛躍的高容量化という、当初の期待を超える成果を得ることが出来た。この現象の機構解明に注力することは、研究開始時に目標として掲げたキーとなる表面吸着種の特定に繋がると期待される。一般に、電極表面吸着種の吸着状態ならびに吸着量は正極電位に依存することを勘案し、今後は、種々の電解液系における放電容量の電位依存性を詳細に調べ、表面吸着種の特性に資する基礎データの蓄積を図る。 一方、分光法の活用に関しては、実験操作上の予期せぬ問題と対面した。次年度はこの問題を克服し、放電反応に関与する反応種の分子情報を得る活動に着手する。ハイスループット評価システムの活用に関しては、探索活動自体は順調に推移しており、今後もデータの蓄積を図る。
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