研究課題/領域番号 |
18H02077
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
増田 卓也 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端材料解析研究拠点, グループリーダー (20466460)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 電気化学 / X線光電子分光法 / in situ / オペランド / 無機固体材料 / 全固体電池 |
研究実績の概要 |
固体電解質シートLi7La3Zr2-xTaxO12(LLZT)の一方の表面にシリコン薄膜をスパッタ法により成膜し、もう一方の表面にはリチウム薄膜を熱蒸着することによって、Si/LLZT/Li構造を構築した。申請者がこれまでの研究により開発に着手し、本研究課題において完成させた「オペランドX線光電子分光測定システム」に、上記のように作製したSi/LLZT/Li試料を導入し、電圧を印加した状態でSi電極へのLiの脱挿入過程をその場観察した。 この結果、「Liイオンが電気化学的に還元され、Siと反応してリチウムシリサイドを形成すること」に加え、「この一部が真空装置内に存在するわずかな酸素と反応して不働態を形成すること」や、「リチウムシリサイドからLiが脱離することに伴い、抵抗が増大して、脱離反応がある組成で停止する」といったさまざまなプロセスを観察することに成功した。 電気化学計測により得られた電気量とX線光電子分光測定により得られたピーク強度に加え、文献に報告されている諸物質の物性パラメータを用いて定量的な解析を行い、それぞれの化学種の量を高い精度で決定した。 現在、こうした結果について、Siを全固体電池の負極材料として利用するとした視点で、原著論文として発表するための仕上げを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電圧を印加した状態で固体表面を測定することが可能な特徴的なX線光電子分光測定装置がついに完成したことに加えて、この原理実証という位置づけで全固体電池試料を対象とした動作中オペランド計測実験に成功していることから、おおむね順調に進展していると評価される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、計算科学技術を援用しながら、X線光電子分光測定により得られた結果の解釈を進める。具体的には、さまざまな組成のリチウムシリサイドを対象として、電子状態の計算を行い、組成・構造・電子状態・物性(イオン伝導特性)の相関を明らかにする。また、ポテンシャルステップ法と組み合わせた動的な分光計測を適用して、電気化学的に見積もられるイオン伝導特性と比較を行うことによって、本研究課題の最大のポイントであるイオン輸送と化学状態の同時その場解析を進展させる。
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