研究課題/領域番号 |
18H02080
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 敬行 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (90567760)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 非天然アミノ酸 / 翻訳合成 / ペプチド創薬 / tRNA / リボソーム |
研究実績の概要 |
本研究では、D-アミノ酸やβ-アミノ酸,γ-アミノ酸,N-メチルアミノ酸などの特殊な骨格を持つ非天然アミノ酸のペプチド鎖中への翻訳導入を目指して、以下の(1)(2)(3)の翻訳反応の各ステップにおける問題を解決するためのサブプロジェクトを並行して進めている。 (1)非天然アミノアシルtRNAのアコモデーションの促進:上記の非天然アミノ酸は翻訳因子EF-Tuとの結合力が弱いと考えられるため、EF-Tuへの変異の導入ないしtRNAのTステム部分の配列を改変しEF-Tuとの結合力を高めることによって、翻訳系への導入効率を向上させる。 (2)非天然アミノ酸間のペプチド鎖転移反応の促進:リボソームのペプチド鎖転移反応の活性中心は23S rRNAのドメインVが担っているが、この領域の塩基配列の改変により特殊アミノ酸の導入効率が向上する可能性が示唆されているため、該当部分の配列の改変や塩基修飾の変異を試みる。 (3)誤トランスロケーションの抑制:翻訳におけるトランスロケーション反応は翻訳因子の一つであるEF-Gが担っているが、EFGの濃度が高い条件下では誤トランスロケーションが生じ非天然アミノ酸を含むペプチジルtRNAの脱落が生じると考えられるため、EF-Gの濃度の最適化を図る。 これらの検討の結果、特に(1)および(3)が非天然アミノ酸の連続導入において効果があることが確認され、特にD-アミノ酸やβ-アミノ酸を10連続でペプチド鎖中に導入することに成功した。また、N-メチルアミノ酸の連続導入の効率も向上することが確認されている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
D-アミノ酸、β-アミノ酸、N-メチルアミノ酸等の広汎なアミノ酸基質の翻訳導入テストをすでに実施できており、より困難であるとされる連続導入についてもいくつかの基質において達成できていることから、十分な達成度を実現できていると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果により、D-アミノ酸、β-アミノ酸、N-メチルアミノ酸については単独導入だけでなく連続導入が実現できている。今後はさらに導入困難であることが予想されるγ-アミノ酸やδ-アミノ酸の導入に着手する。 これまでのところ、固定された配列のモデルペプチドにこれらの非天然アミノ酸を導入する検討を主に進めているが、翻訳の鋳型となるmRNAの配列をランダマイズすることにより、これらの非天然アミノ酸を含むランダムペプチドライブラリを構築できる。今後はそのようなランダムペプチドライブラリの構築と、それを用いた薬理活性ペプチドのスクリーニングに重点を移し、創薬への展開を目指す。ペプチドのスクリーニング法としてはRaPIDディスプレイ法を適用する。具体的には抗炎症作用ペプチドないし自己免疫疾患治療薬の探索および開発を目指す。
|