本研究では、申請者の独自技術である「局在性リガンドによるタンパク質局在制御技術(SLIPT)」と「ゲノム編集技術」を融合し、タグタンパク質をノックインした内在性タンパク質の細胞内局在を化合物(局在性リガンド)で制御する基盤技術を確立する。本年度は、下記の成果を達成した。 1)複数のノックイン細胞の樹立。我々は前年度までに、CRISPR/Cas9による部位特異的ゲノム切断とゲノム修復機構を利用した遺伝子ノックイン系を構築し、内在性cRafのC末端にin-frameでタグタンパク質(ループ改変型eDHFRタグ)をノックインした細胞の樹立に成功している。今年度はさらにその手法を用いることで、内在性cRafに天然型eDHFRタグをノックインした細胞および、内在性BRafにループ改変型eDHFRタグをノックインした細胞を樹立することに成功した。 2)ノックイン細胞におけるcRafとBRafの機能解析。本年度はさらに、上で得たノックイン細胞に各種局在性リガンド(細胞膜用のmDcTMP、ゴルジ体用のmgc(3Me)TMP、エンドメンブレン用のoleTMP)を適用することで、タグを融合した内在性cRafとBRafをさまざまなオルガネラ膜に局在移行させる実験を行った。局在性リガンドを用いることで、内在性cRaf/BRafの局在と活性を制御できることが示され、さらに局在先によってcRaf/BRafのシグナル活性が異なる結果を得ることができた。現在さらなる詳細を解析している。
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