研究課題/領域番号 |
18H02089
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
松浦 和則 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (60283389)
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研究分担者 |
佐々木 善浩 京都大学, 工学研究科, 准教授 (90314541)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 人工ウイルスキャプシ / エンベロープ / 自己集合 / 膜タンパク質 |
研究実績の概要 |
昨年度、アニオン性人工ウイルスキャプシドをカチオン性脂質で覆うことによりエンベロープ型人工ウイルスキャプシドの創製に成功した。今年度は、エンベロープ型人工ウイルスキャプシドをGdイオンで染色してTEM観察することにより、脂質二分子膜の厚さに相当するフリンジ構造を有する90 nm程度の球状集合体が確認された。また、beta-annulus-EEペプチドをTAMRA修飾し、NBD-PEを含むカチオン性脂質との複合化により蛍光ラベルエンベロープ型人工ウイルスキャプシドを構築した。蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)測定およびフローサイトメトリー解析から、脂質二分子膜とペプチドが近接した複合体構造であることを確認した。現在、これらの成果をまとめた論文をChemical Communications誌に投稿中である。 また、無細胞発現系によりエンベロープ型人工ウイルスキャプシド表面上への膜タンパク質Connexin-43の提示を行った。ウエスタンブロットによりConnexin-43の発現が確認され、TEM観察により100 nm程度の表面が歪な球状集合体が観察された。この複合体に、抗Connexin-43抗体と金ナノ粒子標識二次抗体を添加し、TEM観察を行ったところ、100 nmの球状構造体の表面に金ナノ粒子由来のドット構造が確認された。また、蛍光ラベル抗体を用いた蛍光相関分光法により、Connexin-43がエンベロープ型人工ウイルスキャプシド上に存在することが確認された。 さらに、エンベロープ型人工ウイルスキャプシドへの脂質膜担持についての詳細を評価するため、イメージングフローサイトメトリーによる単粒子解析をおこなった。具体的には、モデルとしてのリポソーム、脂質膜被覆ナノ微粒子、人工ウィルスキャプシドを用い、脂質膜を担持する微粒子の存在率などの定量評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的通り、静電相互作用によりエンベロープ型人工ウイルスキャプシドを構築することに成功し、TEM観察、ζ電位測定、FRET測定、フローサイトメトリーなどにおりその集合構造を確認した。また、臨界会合濃度がペプチド単体の場合よりも低濃度となることを見出した。さらに、無細胞発現系を用いて膜タンパク質を搭載したエンベロープ型人工ウイルスキャプシドの構築にも成功した。
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今後の研究の推進方策 |
まず、令和元年度に構築することに成功したConnexin-43搭載エンベロープ型人工ウイルスキャプシドの機能性評価を行う。具体的には、細胞に結合することにより、人工ウイルスキャプシドから細胞への内包物の物質輸送活性などを評価する。また、膜型抗体やヘマグルチニンなどの膜受容体を搭載したエンベロープ型人工ウイルスキャプシドを、無細胞発現系を用いて構築し、それらの機能性評価を行う。標的細胞(ヘマグルチニンであればGM3を発現している細胞)との結合および細胞内取り込みをフローサイトメトリーや共焦点レーザー顕微鏡を用いて評価する。ヘマグルチニンを装備したエンベロープ型人工ウイルスキャプシドの結合挙動が、天然のインフルエンザウイルスに匹敵するように、膜内のヘマグルチニン量を最適化する。さらに、天然のエクソソームなどにおいて、細胞外への放出に関与することが示唆されている膜タンパク質をエンベロープ型人工ウイルスに装備することで、従来あまり着目されていなかった細胞外放出機構についての知見を得る。
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備考 |
2019年9月 高分子学会三菱ケミカル賞(松浦)
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