研究課題/領域番号 |
18H02094
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 健夫 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (90533125)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | RNA / 修飾 |
研究実績の概要 |
本研究で対象とする高等真核生物を特徴づけるRNA転写後修飾について、前年度までの解析を継続した。また動物の組織別におけるRNA修飾を探査する過程で、マウス脳のヌクレオシド分析から、これまでに未同定の新規修飾構造Xの存在を見出した。様々な生物種由来のヌクレオシド分析データを再解析したところ、この新規修飾は微生物(大腸菌)や酵母には検出されず動物に主に存在しており、動物組織においても、脳で比較的高い強度で検出されるといった特徴が見られた。さらにこの修飾の分子量やHPLCでのカラム分離の挙動に基づき構造を推測し、有機化学合成したXと動物組織由来のXでカラム分離の挙動が一致したことから修飾Xの構造決定にも成功したと考えている。この修飾がどのRNA種のどの部位に導入されるかを特定するため、tRNAやrRNA、ポリA付加RNAの分画を試み、各画分由来のヌクレオシドにXが濃縮されるかの解析を進め、現在はrRNAを分画する条件の最適化を進めている。またヒト由来の培養細胞(HEK293T)において調整サンプル間でXの検出強度に大きく異なる現象が見出されており、培養環境のどのような違いがこの修飾の検出強度に影響を及ぼすか、培養条件を変更(培地pH、培養期間など)することで外部環境要因的な刺激を培養細胞に与え、検出強度におよぼす影響を探索した。現在までのところXの増強に対応する特定の刺激は見つかっておらず、引き続き探索を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度に新たに見出された新規修飾は、生物種間の分布や動物脳組織で検出されやすい傾向から、高等真核生物を特徴づけるRNA修飾の性質を有していると考えられる。上述の通りこの修飾の導入部位や生合成経路が不明である状況であるが、化学合成標品を作成し内在の修飾と比較することで構造決定に成功した。生合成経路の特定や機能解析など、次なる諸課題の解明に向けた検討が順当に進行しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
新たに見出した新規修飾について、修飾導入部位や生合成経路、分子機能について不明な点が多いため、これらを解明するための解析を引き続き進める。トータルRNAを解析した際の存在量に関し、未だ規則性は不明だがサンプル間で検出強度に大きく異なるケースが見出されており、疾患等による遺伝子発現プロファイルに影響を与えうる状況を別にすればRNA修飾の定常状態量は安定的である、といった従来の修飾生合成における考え方とは異なる様子が見られることから、このような修飾量の動的制御の現象について具体的な機序を明らかにしていく必要があるだろう。
|