研究課題/領域番号 |
18H02095
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
江口 正 東京工業大学, 理学院, 教授 (60201365)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ラジカルSAM酵素 / 天然物 / 生合成 / 反応機構 |
研究実績の概要 |
今年度は、新たなラジカルS-アデノシルメチオニン(SAM)酵素として、環状ペプチド化合物Q-6402-AおよびBに含まれる非タンパク質性アミノ酸である1-アミノ-2-メチルシクロプロパンカルボン酸の骨格形成を行うラジカルSAM酵素、コバラミン依存ラジカルSAMメチル化酵素Orf2399について機能解析を進めた。1-アミノ-2-メチルシクロプロパンカルボン酸は、コバラミン依存ラジカルSAMメチル化酵素Orf2399と環化する酵素Orf2400によって生合成されるものと考えられていた。しかし、SAMのシクロプロパン化への環化が先に起きるのか、SAMへのメチル化が起きるのかは、不明であった。そこで、両酵素を大腸菌にて発現を行い、in vitro での酵素反応を試みた。両酵素存在のもと、嫌気条件下でSAM、メチルコバラミンを反応させると、1-アミノ-2-メチルシクロプロパンカルボン酸が生成していることが明らかになった。これにより、Q-6402-AおよびBに含まれる非タンパク質性アミノ酸である1-アミノ-2-メチルシクロプロパンカルボン酸は、Orf2399とOrf2400の作用によって生合成されることが明らかになった。次に反応の順番を決めるためにラジカルSAMメチル化酵素Orf2399をSAM、メチルコバラミン存在下あるいはアミノシクロプロパンカルボン酸、メチルコバラミン存在下、嫌気条件下で酵素反応を行った。その結果、SAMからはメチル化が進行した化合物の生成が観測された。従って、まずSAMがOrf2399によってメチル化され、その後Orf2400によって、シクロプロパン化が進行することが明らかになった。しかしながら、メチル化の位置、反応の立体化学は未だに不明である。今後メチル化の位置を決定するとともに生成物の立体化学の決定を行い、本酵素の詳細な反応機構解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、コバラミン依存ラジカルSAMメチル化酵素Orf2399について機能解析を進めた。先にも述べたように、環状ペプチド化合物Q-6402-AおよびBに含まれる非タンパク質性アミノ酸である1-アミノ-2-メチルシクロプロパンカルボン酸は、SAMがOrf2399によってメチル化され、その後Orf2400によって、シクロプロパン化が進行することが明らかになった。さらに昨年度から進めていたホパノイドの生合成に関わると考えられるラジカルSAM酵素HpnHについて、詳細な反応機構解析の結果、反応機構を明らかに出き、現在論文執筆中である。この様に、新たなラジカルSAM酵素着々と新たな知見が得られている段階にあり、これらを考えるとほぼ予定通りに研究計画が進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降も引き続き、機能未知のラジカルSAM酵素の機能解析を進めていく。種々の天然物の生合成遺伝子クラスターにコードされているラジカルSAM酵素には、バクテリオホパン、マクロラクタム抗生物質インセドニン、アミノグリコシド抗生物質デオキシブチロシンおよびトブラマイシン、抗腫瘍抗生物質パクタマシンなどの生合成遺伝子クラスターに含まれるラジカルSAM酵素があり、これらの酵素の機能は、化学構造と類似の抗生物質の生合成経路等から推定できるものの、詳細な反応機構は、何が基質であるかを含めて未解明であり、非常に興味深いものである。本研究では、着々と機能未知のラジカルSAM酵素機能解明を進めており、今後も精力的に進めていく所存である。
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