研究課題/領域番号 |
18H02098
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
澤 智裕 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (30284756)
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研究分担者 |
津々木 博康 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (40586608)
小野 勝彦 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (80573592)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | インフラマソーム / グルタチオン / 活性酸素 / 自然免疫 |
研究実績の概要 |
インフラマソームは、感染や組織損傷、環境異物への暴露などにより活性化されるタンパク質複合体で、インターロイキン(IL)-1βやIL-18などの炎症性サイトカイン生成をもたらす重要な自然炎症応答を担っている。我々は内因性のインフラマソーム活性化因子であるアデノシン3リン酸(ATP)による刺激が、抗酸化ペプチドであるグルタチオン(GSH)の細胞外への放出を促進し、それによって、これまでに報告されたカリウム放出とは異なる新規な経路でインフラマソームの活性化に関わることを示す予備結果を得た。本研究ではGSH放出を介したインフラマソーム活性化の機序とその生理・病態生理の意義の解明を目指す。本年度は、(1)GSH放出によるインフラマソーム活性化の機序、および(2)GSH放出に対する阻害剤探索、を中心に解析をすすめた。NLRP3インフラマソームの活性化は、マウスJ774.1細胞を用い、大腸菌由来リポ多糖(LPS)とATPによる刺激によって活性化した。ATP刺激後の細胞内のグルタチオン含量を質量分析にて定量解析したところ、刺激後30分以内に90%以上の減少が見られた。このグルタチオンの減少は、ATP受容体であるP2X7受容体アンタゴニストにより阻害された。さたに細胞外に酸化型グルタチオン(GSSG)を添加すると、ATP刺激によるグルタチオン減少が有意に抑制された。このことから、P2X7受容体活性化がグルタチオン放出を制御し、さらにグルタチオン放出が細胞外GSSGによって競合的に阻害されることが示された。今後、グルタチオン輸送に関わる細胞膜タンパク質の探索を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インフラマソーム活性化の最初のセンシングにATP受容体であるP2X7受容体が関わることを明らかにできた。さらにグルタチオン放出が、細胞外に添加したGSSGによって阻害されることを見出し、今後、細胞膜を介したグルタチオン放出を探索する上で重要な知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
培養細胞で観察された現象が、マウス個体内で起こっているかどうかを動物実験により検証する。またグルタチオン放出を抑制することが、インフラマソームの活性化を抑制できるかどうかを、同じく培養細胞と動物実験により検証する。
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