研究課題
インフラマソームは、感染や組織損傷、環境異物への暴露などにより活性化されるタンパク質複合体で、インターロイキン(IL)-1βやIL-18などの炎症性サイトカイン生成をもたらす重要な自然炎症応答を担っている。我々は内因性のインフラマソーム活性化因子であるアデノシン3リン酸(ATP)による刺激が、抗酸化ペプチドであるグルタチオン(GSH)の細胞外への放出を促進し、それによって、インフラマソームの活性化に関わることを示す予備結果を得た。本研究ではGSH放出を介したインフラマソーム活性化の機序とその生理・病態生理の意義の解明を目指す。本年度は、(1)インフラマソーム活性化剤の種類によるGSH放出の違い、(2)マウス骨髄由来マクロファージにおけるGSH放出とインフラマソーム活性化、(3)マウス個体でのインフラマソーム活性に対するGSHおよびGSSGの影響、を中心に解析をすすめた。NLRP3インフラマソームの活性化は、マウスJ774.1細胞を大腸菌由来リポ多糖(LPS)で前刺激したのち、異なる刺激剤で本刺激を行った。具体的にはATP、nigericin、ネズミチフス菌感染、2本鎖DNA(poly dA:dT)による刺激によって活性化した。興味深いことに細胞内グルタチオンの放出はATP刺激のときにだけ観察された。またマウス骨髄由来マクロファージを同様にLPSとATPで刺激すると、細胞内グルタチオンの放出が確認された。マウス腹腔内にLPSとATPを投与するin vivoインフラマソーム活性化モデルを構築した。血漿中のIL-1βの増加を確認した。そのモデルにGSHあるいはGSSGを腹腔内投与すると、IL-1βの増加が有意に減少し、個体内においてもグルタチオン放出を介したインフラマソームの活性化が起こっている可能性が示唆された。今後、グルタチオン輸送に関わる細胞膜タンパク質の探索を進める。
2: おおむね順調に進展している
樹立細胞株に加え、骨髄由来マクロファージにおいても、同様のグルタチオン放出と、その阻害によるインフラマソーム活性化の阻害が観察され、より生体内に近い環境での生理現象であることが確認できた。さらに個体レベルでもグルタチオン依存的なインフラマソームの活性制御が可能であることを示唆できた。
グルタチオン放出をハイスループットでモニターできる実験系を構築する。この系を活用して、放出を阻害する化合物を化合物ライブラリーより探索し、その薬理効果を検証する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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