本研究では、発生期の分化途上にある多様な細胞種間の相互作用について、ES細胞から誘導した前駆細胞を使った複数の分化誘導系を組み合わせた3次元培養系を構築して、細胞分化に影響を及ぼす化合物の探索を行うとともに、それら化合物が各分化過程に及ぼす影響を多面的に解析することを目的とする。 2018年度の研究を通して、マウスES細胞から誘導したFlk1+細胞(心血管系前駆細胞)および神経幹細胞を用いて、単独または複合的3次元培養系の条件検討を行った。また、本複合的3次元培養系を用いた化合物の活性評価系について、小分子の投与タイミング、投与方法などについての条件検討も行った。 2019年度は、研究室保有の食品抽出物ライブラリー(96サンプル)について、複合的3次元培養系によるスクリーニングをおこないヒットサンプルを確認した。 2020年度は、2018および2019年度の研究を通して構築した3次元培養系による食品サンプルのスクリーニングを行った結果、48サンプルに血管・アストロサイトへの分化促進活性が認められ、3サンプルについてはさらに心筋への分化促進活性を確認した。そこで、血管・心筋・アストロサイトそれぞれへの分化活性を示した食品サンプルを選び、活性本体の生成を行った。現時点で生成の最終段階にあるが活性本体の同定には至っていない。今後これらの活性本体の構造を明らかにする予定である。
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