研究課題
本研究では、非構造性たんぱく質が介在するたんぱく質相互作用のin vitro評価系を確立し、スクリーニングと合理設計によるIDPs阻害剤を創出することを目的とした。具体的な標的IDPたんぱく質として、①K-Ras C末端領域、②概日時計転写因子BMAL1/CLOCKのbHLH-PASドメイン、③種々のリン酸化たんぱく質14-3-3結合モチーフを選定し、①K-Ras脂質修飾、②BMAL1/CLOCKのヘテロ2量体形成とE-box DNAとの複合体形成、③14-3-3への結合、を阻害する化合物を合理設計または小・中分子ライブラリ探索により創出する。2018年度は、①について、K-RasとRafのたんぱく質間相互作用を可視化した蛍光細胞イメージング実験を実施し、K-Rasと脂質修飾酵素とのたんぱく質間相互作用面を認識する中分子阻害剤がK-Rasの膜局在とRafとの相互作用を阻害することを明らかにした。②について、BMAL1/CLOCKを大腸菌から発現し、変性条件下で可溶化した封入体を精製後透析により再構成することに成功した。蛍光偏光変化を指標とする滴定実験によりBMAL1/CLOCKのヘテロ2量体形成と選択的なE-box DNA結合能を確認した。なお解離定数は論文記載の値とほぼ同程度であった。続いてこのアッセイ系を用いて低分子複素環化合物ライブラリのスクリーニングを実施し、BMAL1/CLOCKのDNA結合を顕著に阻害する化合物を見出した。この化合物は濃度依存的な阻害活性を示し、ベンゼン環が縮環した嵩高い誘導体は不活性であった。このことから活性が化合物の化学構造に依存すすることが確認できた。③については、14-3-3シグマ選択的蛍光標識剤の合理設計を行い、天然物フシコクシンの位置選択的官能基化を検討した。また種々の誘導体の抗がん活性と化学構造の相関を明らかにし、論文発表を行った。
2: おおむね順調に進展している
KRas脂質修飾を対象とした中分子阻害剤が細胞内で機能することを実証できたことは、動物実験に向けた展開を図るうえで重要な知見となった。また当初の目的であった非構造性たんぱく質の精製と再構築および分光学的な機能評価系の構築に成功した。このアッセイ系を用いて約1800個の化合物ライブラリのスクリーニングを実施してヒット化合物を見出し、その作用機序の解析を進めいくつかの興味深い知見を得ることができた。
本研究課題で導入した質量分析装置を駆使し、誘導体合成と作用機序解明研究を推進する。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 5件、 招待講演 6件) 備考 (1件)
Chemistry - A European Journal
巻: 24 ページ: 16066~16071
https://doi.org/10.1002/chem.201804428
http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/agriculture/lab/johkanda/index.html