研究課題/領域番号 |
18H02106
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
大神田 淳子 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (50233052)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 天然変性たんぱく質 / KRas脂質修飾阻害剤 / 概日時計転写因子 / 14-3-3たんぱく質 / 阻害剤 |
研究実績の概要 |
本研究では、非構造性たんぱく質(IDPs)が介在するたんぱく質相互作用のin vitro評価系を確立し、スクリーニングと合理設計によるIDPs阻害剤を創出することを目的とした。具体的な標的IDPたんぱく質として、①K-Ras C末端領域、②概日時計転写因子BMAL1/CLOCKのbHLH-PASドメイン、③種々のリン酸化たんぱく質14-3-3結合モチーフを選定し、①K-Ras脂質修飾、②BMAL1/CLOCKのヘテロ2量体形成とE-box DNAとの複合体形成、③14-3-3への結合、を阻害する化合物を合理設計または化合物ライブラリ探索により創出する。前年度の知見を踏まえ、以下の項目を検討した。①前年度までに開発したKRas脂質修飾中分子阻害剤は、がん細胞中のKRasの活性化と下流たんぱく質との相互作用に対して顕著な阻害活性を示したが、代謝安定性の課題があった。そこで亜鉛配位子として含窒素複素環化合物を導入した新規ペプチドミメティクスを合理設計し合成およびin vitro阻害活性試験を実施した。遺伝子組み換え型酵素を用いたin vitro評価の結果、化合物は低nM濃度の極めて高い阻害活性を示すことを明らかにした。計算科学による考察から、化合物は天然基質ペプチドと活性ポケット内の亜鉛配位、疎水性相互作用、水素結合の相互作用をいずれも再現していることが示唆された。②については、前年度に見出したヒット化合物の再合成と阻害活性の検証、および細胞実験による生物活性評価を検討し、化合物が系中で還元型と平衡状態にありどちらも同等の阻害活性を示すことが分かった。質量分析の結果、たんぱく質との共有結合反応による不可逆的な阻害機構が示唆された。③テトラジン含有フシコクシンとシクロプロペン含有ペプチドフラグメントの合成を完了し、両者間の反応をHPLCにより確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
KRas脂質修飾に対して市販薬を凌駕する高活性新規ペプチドミメティクスを開発できた。また、概日時計転写因子の機能評価系を確立し阻害剤を初めて見出せた。特異な作用機序を持つことが示唆されており、詳細が解明されればより高活性な阻害剤へのアプローチが拓かれると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では、動物実験に向けた化合物のチューニングと細胞実験のデータを揃える。同時にKRas阻害剤の知財化を進める。概日時計転写因子阻害剤については、質量分析による結合位置の同定を検討し作用機序の解明に取り組む。またたんぱく質の部位特異的に蛍光基を付与した新しい評価系の構築にも取り組む。14-3-3についてはisoform選択的蛍光標識剤の細胞内機能評価を実施する予定である。
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