研究課題/領域番号 |
18H02114
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
浅川 晋 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (50335014)
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研究分担者 |
村瀬 潤 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (30285241)
渡邉 健史 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (60547016)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 土壌微生物 / 田畑輪換 |
研究実績の概要 |
水田土壌中の微生物が極めて安定で頑健な群集を形成しているメカニズムの解明を目指し、田畑輪換圃場に注目し、田畑輪換による畑転換・水田復元に伴う各種土壌微生物群集の動態を長期間にわたり調査・解析する。田畑輪換の管理で生じる畑転換と水田復元が群集の存在量と構成に及ぼす影響や、群集の動態とその変化に影響を及ぼす要因を明らかにすることを目的とする。 農研機構東北農業研究センター大仙研究拠点(秋田県大仙市)内の長期田畑輪換試験圃場の輪換区と対照の連年水田区より、ダイズあるいは水稲の播種・移植前(3月下旬)、水稲あるいはダイズの生育中(8月中旬)、収穫後(10月下旬)の3回作土層土壌を採取し、DNAおよびRNAの抽出用試料として調製・保存した。なお、輪換区については、ダイズ作後水稲作に戻され3年間の水田が続いた後に、2019年に再度ダイズ畑へと転換されており、2021年はダイズ作3年目であった。 2008年から2019年(2010年は除く)の12年間にわたり採取した試料について16S rRNA遺伝子を対象にした定量PCR法により全細菌群集の存在量を調査した。輪換区はこの期間中2回の水田復元を挟み3 回畑転換が行われている。畑作あるいは水田期間による全細菌の存在量の変動には明確な傾向は見られなかった。輪換区の全細菌群集の存在量はオーダーとしては連年水田区とほぼ同じであったが、常に連年水田区よりも低い値を示し、水田復元期間に連年水田区と同程度まで増加するようなはっきりとした傾向は見られなかった。全細菌には好気性および嫌気性の菌群が含まれると考えられるが、2020年度に明らかにした鉄還元菌群集と同様に、畑転換の影響により全体として存在量が低下することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスの感染拡大のため、試料採取のための出張可能時期を見極める必要があったが、ダイズあるいは水稲の播種・移植前、水稲あるいはダイズの生育中と収穫後の3回について、対象とする田畑輪換試験圃場より継続的に土壌試料の採取を続けることができた。また、2008年から2019年にかけて12年間にわたる試料について、土壌中の物質代謝に大きな役割を果たしていると考えられる全細菌に対する畑転換の影響の特徴を明らかにすることができ、おおむね順調に研究が進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
輪換区については2022年はダイズ畑転換3年目後に水田に復元される初年目となる予定であり、水田復元後の微生物群集の経時変化および土壌の酸化還元状態の進行を解析するための試料採取と調査を進めていく予定である。今後も感染拡大状況を勘案しながら試料採取のための出張可能時期を見極め、対象とする田畑輪換試験圃場より土壌試料の採取を継続し、得られた試料の解析を行っていく予定である。また、2022年度は最終年度となるため、得られたデータの取りまとめと結果の総括を行う予定としている。
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備考 |
学会発表欄に記載した日本土壌微生物学会2021年度大会での招待講演は市民公開シンポジウムでの講演発表であり、講演内容がマイナビ農業の農業ニュース(https://agri.mynavi.jp/2021_07_21_163830/)で紹介された。
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