研究実績の概要 |
ユビキチンリガーゼHRZの基質候補であるグルタレドキシン、bZIP転写因子について、新規研究員によりリコンビナントタンパク質の in vitro 実験を追試し、再現性を確認した。これらのうちいくつかのタンパク質がHRZによりユビキチン化され、26SプロテアソームによりHRZ依存的、かつ鉄欠乏依存的に分解されることを示唆する結果が確認された。 bZIP転写因子の過剰発現イネについて、鉄関連遺伝子の発現変化をRT-qPCRにより確認した。 鉄硫黄クラスター要求性酵素であるイネのアコニターゼOsACO1が、イネの鉄欠乏応答性遺伝子の発現を正に制御する新規因子であり、mRNAのステム―ループ構造を持つ特異的な配列(PAIR motifと命名)に結合することをまとめて論文発表した (Senoura et al. 2020 Plant Mol. Biol. 104, 629-645)。鉄硫黄クラスターが植物細胞において鉄シグナルとして働く可能性を提示した。 HRZが発現制御する鉄欠乏誘導性ペプチド OsIMA1, OsIMA2の発現量を増減させた形質転換イネを解析した。OsIMA発現誘導イネは鉄欠乏耐性と地上部への鉄の蓄積を示した。また、これらのイネの鉄十分根では、鉄ホメオスタシスに関与する鉄欠乏誘導性遺伝子のほぼ全てが顕著に発現誘導されており、その誘導率は鉄欠乏による誘導率と正の相関を示した。一方、OsIMA発現抑制イネは顕著な表現型を示さなかったが、発現誘導イネと逆の傾向を示した。これらの結果をまとめて論文発表した(Kobayashi et al. 2021 J. Exp. Bot. 72, 2196-2211)。
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