研究実績の概要 |
TB-97株全ゲノムの解析結果より、本菌株はテレフタル酸(TPA)分解の上流(プロトカテク酸:PCAまで)の分解遺伝子群1セット、PCAから下流の代謝遺伝子群を2セット持つことが明らかとなった。そこで大腸菌にTPA分解遺伝子群を導入することでPCA生産株の構築を試みることとした。TB-97株のテレフタル酸分解関連遺伝子の上流(PCAまで)に関する遺伝子群(tphR:regulator,tphA1A2:terephthalate 1,2-dioxygenaseαβsubunit,tphB:cis-1,2-dihydroxy-1,2-dihydroterephthalate dehydrogenase,tphC:ferredoxin oxidoreductasde,tphK:MSF transporter)を含む遺伝子領域を増幅し、大腸菌に導入したところ、TPAの分解が確認され、その分解速度は(大試験管での培養においては)TB-97株と同等であった。一方、組換え大腸菌株においては、TB-97株では観察されないPCAの生産が確認された。これらの結果から、導入した遺伝子群がTPA分解遺伝子であり、かつ大腸菌で発現可能であることが示された。また、ここからオリジナルプロモーターを除去し、lacプロモーターを導入してIPTG制御下での発現に成功した。 解析の過程でその下流 にある未知のポーリン様タンパクがテレフタル酸分解酵素群の一部であることが示唆された。そこで本遺伝子の大腸菌への導入、およびTB-97株における同遺伝子の破壊を行った。しかし、TPAの分解や取り込みにはほどんど変化が見られなかった。 また、TB-97株の遺伝子破壊を試み、本菌株に2セット存在するmeta-開裂経路(PCAから下流の代謝遺伝子群)の両方が活性を持つ酵素群をコードしていることを明らかにした。
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