放線菌は多様な二次代謝を行うが、これまでに発見された二次代謝産物はほんの一部であり、未発見の潜在的二次代謝産物が多数存在することが近年明らかとなった。このような潜在的二次代謝産物の発見により新たな医薬品の開発へとつながることが期待できる。申請者らは、潜在的二次代謝を活性化する手法として「複合培養法」を確立し、これまでに23種類の新規二次代謝産物を発見している。これは、放線菌の生息する土壌環境にヒントを得、ミコール酸含有細菌(MACB)と放線菌を混合培養することによって放線菌の潜在的二次代謝を活性化する手法であるが、その分子機構は未解明のままである。複合培養はMACBの生産する特定の物質による信号伝達ではなく、MACBが放線菌に物理的に接触することによって刺激が伝達される。本研究では、変異株解析による遺伝子同定アプローチを中心に、複合培養活性の機構解明のために以下の3つの研究テーマを設定して、分子レベルで進めた。 研究計画1、複合培養非感受性変異株による複合培養作用機構の解明。SCO1718変異株は複合培養時に応答が遅延することが明らかとなった。本遺伝子はTetR様転写因子であり、その下流にはABCトランスポーターがコードされていた。 研究計画2、網羅的転写解析による複合培養時特異的に転写される遺伝子の特定。網羅的転写解析より、リン酸制御に関与するPhoPレギュロンの遺伝子群が複合培養時に大きく転写変動していることが明らかとなった。 研究計画3、複合培養を用いた潜在的二次代謝産物の探索。Streptomyces sp. KUSC_F05とTsukamurella pulmonisとの複合培養によりLongicatenamides A-Dを、また、 Amycolatopsis sp. 26-4とT. pulmonisとの複合培養により、Amycolapeptins A及びBを発見した。
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