研究課題/領域番号 |
18H02122
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大西 康夫 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (90292789)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 希少放線菌 / 胞子嚢 / 運動性胞子 / べん毛 / 形態分化 / 遺伝子発現制御 / 転写因子 |
研究実績の概要 |
本研究は形態的に最も複雑に進化したバクテリアである希少放線菌Actinoplanes missouriensisを対象に、その運動性胞子の形成・休眠・覚醒・運動制御に着目し、環境に応答した遺伝子発現制御機構および細胞内シグナル伝達機構の解明に取り組むことで、微生物細胞の巧妙な生存戦略を明らかにすることを目的としている。以下に本年度の主要な成果をまとめた。
小課題(1) 胞子嚢・胞子形成に関わる遺伝子群の発現制御機構の解明:胞子嚢内での胞子成熟に関わる多くの遺伝子の発現に関与する3つのシグマFliAホモログについては機能解析結果を論文発表した。本年度、新たに見出されたFliA標的遺伝子に関して遺伝子破壊による機能解析を行い、胞子嚢成熟に関わる複数の遺伝子の機能を明らかにした。 小課題(2) 胞子の休眠と覚醒の分子機構の解明:胞子嚢内で胞子の休眠に関与するTcrA-HhkA(His-Aspリン酸リレー型の応答制御因子とHisキナーゼ)系について、リン酸化によるTcrAのDNA結合能の上昇をin vitro系で定量的に解析し、これまでの結果と合わせて論文投稿した。一方、胞子の休眠に関するシグマ-アンチシグマ系について、mRNA-Seq解析によりシグマ因子の標的遺伝子群を同定するとともに、in vitro転写系での解析を開始した。また、胞子嚢形成と胞子嚢開裂に重要な機能をもつプロテアーゼ複合体に関して、4つ存在するプロテアーゼサブユニットの中から、胞子嚢開裂に関わる1つを特定した。 小課題(3) 運動性胞子の運動制御機構の解明:べん毛アセンブリに必要なチオレドキシン様タンパク質TrxAおよびAMIS_1780に関して、遊走子が泳げないそれぞれの変異株からサプレッサー変異株を取得し、その変異点を決定することで、TrxAおよびAMIS_1780の制御に関係する遺伝子を取得した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主としてマンパワーの関係で、一部、ペンディングにした課題はあるが、大部分の実験は計画通り順調に遂行することができた。論文化の一歩手前まで進んでおる課題も複数あり、全体として、「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
基本的に当初計画通りに研究を遂行するが、本年度が最終年度となるため、できるだけ多くの課題を論文化する方向で実験を行う。コロナウイルス騒動の影響のため、4月、5月は実験をほとんど行うことができておらず、6月から制限つきで実験を再開したところであるが、研究をまとめる方向の実験を優先していきたいと考えている。
|