研究課題/領域番号 |
18H02128
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
吉田 健一 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 教授 (20230732)
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研究分担者 |
石川 周 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 准教授 (30359872)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Geobacillus kaustophilus / カタボライト抑制 / イノシトール / 転写制御 / タンパク質相互作用 |
研究実績の概要 |
グラム陽性菌に広く保存されるCrh (Carbon-flux regulating HPr) は、グルコースなど優先的に利用される炭素源が存在する場合、他の炭素 源の代謝を抑制するカタボライト抑制に関わる制御因子であると想定される。しかし、この想定機能は主たるカタボライト抑制を担うHPrと重複しており、予てより疑問を感じていた。そして、好熱性バチルスGeobacillus kaustophilus (GK)のイノシトール代謝系iol遺伝子群が、全くカタボライト抑制を受けないにも拘わらず、リン酸化されたCrhによって抑制される現象を発見して疑問は確信となった。 すなわち、Crhはカタボライト抑制とは無関係かつ未解明の遺伝子調節機構を担うはずである。本研究は、CrhによるGK iol遺伝子群の発現抑制の詳細解析を 皮切りに、Crhが担う未知なるゲノム機能調節機構の解明を目的とする。 Crhを恒常的にリン酸化すると想定されるhprK G268R変異のみをGK親株に導入しiolが発現しなくなる原因がこの変異に他ならないことを確証するために、まず元来存在するhprK遺伝子を削除する必要がある。2018年度にhprK欠失株が作成されたと思われたが、再検証したところ遺伝子削除が実際には達成されていなかったことが判明した。この遺伝子削除の難航より、hprK遺伝子の存在が必須である可能性が考えられたため、戦略を変更して注力してたが、未だ目的の相補実験の完成に至ることができなかった。上記の通り未だHPrK G268R変異+Crh破壊株が完成できておらず、こちらも足踏みが 続いているが、これに先駆けて野生状態の細胞内でCrh-hisを発現させて、それと複合体因子をクロスリンクさせてHis-tagによる精製するシステムを構築することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
進捗の遅延の理由は、hprK遺伝子の削除、ならびにhprK G268R変異との置換に難航を極めていることに尽きる。hprK遺伝子を削除できないことは、この遺伝子の必須性を物語る。しかし、この事実は逆に研究の対象となるhprKならびにcrhが生命システムの維持に直結する重要性を担うことを意味しており、研究目的が狙いどおりに重要な生物学的な機能を果たしていることの傍証ともいえる。一方、GKの遺伝子操作そのものの効率が低いことが研究進捗を妨げていることも顕かであり、新たな遺伝子操作手法の開発と実践を並行して進めている。
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今後の研究の推進方策 |
GKの遺伝子操作に用いるマーカーとして従来はkan耐性遺伝子しか利用できなかったが、最新情報より他の薬剤耐性メーカーも利用できる可能性が見えてきたので、これの導入を進める。また別途開発中のpLS20接合伝達系をGKLへ適応することもできるようになったので、上記と合わせてGKの遺伝子操作を加速させる予定である。これによって、hprK遺伝子の削除、ならびにhprK G268R変異との置換における問題をいち早く解消する。 一方、Crh-hisをGKで発現させるシステム構築に成功できたことは昨年度の収穫であり、上記遺伝子破壊および置換と並行して、タンパク質複合体の解析を先行させて実績を積み、後に上記との統合を図ることにより、一気に課題の解決に迫りたいと考えている。
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