研究課題/領域番号 |
18H02130
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
加藤 純一 広島大学, 統合生命科学研究科(先), 教授 (90231258)
|
研究分担者 |
川崎 健 広島大学, 統合生命科学研究科(先), 助教 (00510299)
緋田 安希子 広島大学, 統合生命科学研究科(先), 助教 (70825760)
田島 誉久 広島大学, 統合生命科学研究科(先), 助教 (80571116)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | ケモセンサー / 物質認識機構 / 走化性 / 青枯病菌 |
研究実績の概要 |
McpC、McpT、McpAはそれぞれRalstonia solanacearumのクエン酸、酒石酸、アミノの走化性センサーである。R. solanacearumの走化性センサー遺伝子全欠損変異株にそれぞれの遺伝子を単独発現するとmcpAではアミノ酸走化性が復帰するものの、mcpCおよびmcpTは機能しない。ところがmcpC及びmcpTを同時に導入するといずれのセンサーの機能も復帰する。この現象を説明し得る仮説として、①McpCとMcpTはヘテロダイマーを形成することで機能する、②McpC及びMcpTのホモダイマーがヘテロなダイマートリマーを形成することで機能する、③mcpC及びmcpT単独発現ではセンサーアレイが形成できないため機能できない、と考え、それらを検証した。①については走化性センサーのリガンド結合部位(LBD)のin vitroプルダウンにより検討する計画である。2018年度もMcpTとMcpCのLBDを大腸菌で発現させて精製を試みたが、フォールディングがうまくいっていないことが分かった。2019年度は大腸菌以外の菌株、Pseudomonas aeruginosaおよびR. solanacearumを宿主として調製を試みたがやはりうまくいかなかった。2018年度の成果を受け、②と③の検証のために、McpAとMcpTのキメラ(McpAのLBDとMcpTのシグナルドメインのキメラ、McpAT)に加えさらに3つのキメラ、McpTA、McpACおよびMcpCAの作成に成功した。特性化済の6つのMCPの遺伝子を欠損させたPSD6株を宿主とした試験からいずれもMCPとして機能することを確認した。また、すべてのMCP遺伝子を欠損させたPOC22株で発現させても機能しないことも確認した。ついで、McpCおよびMcpTがセンサーアレイを形成し、細胞端に局在するかを確認するために、GFPとの融合タンパク質をコードする遺伝子の作成を行った。「ポジティブコントロール」としてMcpAとMcpMも対象に加え、2019年度ではMcpA、C、M、TとGFPの融合タンパク質をコードする遺伝子の作成を完了した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
In vitroプルダウンアッセイのためにMcpCとMcpTのLBDの過剰発現をP. aeruginosaおよびR. solanacearumでも行ったがうまくいかなかった。ホウ酸のセンサーであるMcpBのLBDはE. coliでもうまくフォールディングされた形で発現し、また精製標品を用いたITCのアッセイでホウ酸結合能を観測することができた。ちなみにMcpB遺伝子は全破壊株POC22で発現しても機能する。POC22で機能しないMcpCとMcpTのLBDの機能を保持した状態での過剰発現はうまくいかず、McpBのLBDではうまくいった。POC22での機能の可否となにかつながりがあることなのかもしれない。 McpAT、McpTA、McpAC、McpCAのキメラ遺伝子の作成を完了した。ただ、走化性センサーの機能を確保した状態でキメラを作成する(すなわち、融合箇所の選定)のに手間取ったために、2019年度は遺伝子の作成のみに終始した。2020年度は、POC22株を宿主として種々の組み合わせでキメラ遺伝子を発現させ、走化性測定を行う。その結果をもとに①~③について考察する。 GFP融合遺伝子についても4つのMCP(A, C, M, T)について完成した。親株(R. solanacearum Ps29株)を用いた試験で、蛍光が細胞端に局在することが確認できた。
|
今後の研究の推進方策 |
〇2018および2019年度に作成したキメラ遺伝子(mcpAT、mcpTA、mcpAC、mcpCA)を種々の組み合わせでのペアで載せたプラスミドを作成する。走化性センサーの全遺伝子を破壊した変異株POC22株にプラスミドを導入してペアのキメラMCPを発現させ、走化性を測定する。測定する誘引物質は、キメラMCPのLBDが認識することが分かっている化合物だけでなく、それ以外の化合物についても含める。得られた結果から、①~③について考察を加える。またペアリングによって「リガンド特異性」が変動するかについても考察する。 〇③の直接証明のため、2019年度に作成したGFP融合遺伝子をPOC22株で発現させ、蛍光の局在を調べる。McpAおよびMcpMのGFP融合タンパク質が細胞端に局在し、McpCおよびMcpTのGFP融合タンパク質が細胞端に局在しなければ③の証明になる。もし、McpCおよびMcpTのGFP融合タンパク質とも細胞端に局在するようならば、それは①および②の間接証拠といえよう。
|