研究成果の概要 |
近年の研究より, 植物の概日時計を形成する遺伝子群およびそれらが形成する時計転写ネットワークの分子基盤は明らかになりつつあるが, 全貌の理解には至っていない. 本研究では, 我々がこれまでに世界にさきがけて整備してきた転写因子を扱うオミックス生物学の手法を用いて, 時計転写ネットワーク構造の全貌を解明することを目的とした. 本研究では国際的にもユニークな, ケミカルスクリーニングおよびヒット化合物の作用機序の解明を実施し, 時計のメカニズムに潜んでいたタンパク質群を発見した. さらに時計メカニズムにおける これらタンパク質群による翻訳後修飾の重要性を明確に示した.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
化合物を利用した研究を中心に取り組んだ成果として, 植物時計の安定性のしくみの中で働くタンパク質・遺伝子を新たに見出すことができた. またこれら因子は, タンパク質リン酸化を担うものであり, 時計メカニズムの中に翻訳後修飾が重要であることを示すことができた. また, 化合物スクリーニングを起点として植物時計のメカニズムを理解する方法が, 遺伝的重複性や変異の致死性を乗り越えて関連遺伝子を見出せる有効なものであることが立証できた. 穀物では時計遺伝子の変異が, 花成時期の変更を介して栽培地域の拡大に寄与してきたことが知られている. さらなる調節に向けた研究ルーツとして化合物を提供できた.
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