研究課題
微生物、植物の環境応答を支えるHis-Aspリン酸リレー情報伝達系を構成するレスポンスレギュレーター(RR)は、N末端に存在するレシーバー ドメイン(RD)がリン酸化修飾を受けることでC末端に存在するエフェクタードメイン(ED)の活性が調節される制御因子として機能している。植物時計因子の一つである疑似レスポンスレギュレーター(PRR)もまた、N末端にレシーバー様のドメインを保持する転写制御因子であり、PRR9, PRR7, PRR5はともにCCA1およびLHYと名付けられた明け方に誘導される時計遺伝子の転写を抑制する働きを持つことが知られている。PRRファミリーに保存されているレシーバー様ドメイン(RLD)はリン酸転移を受けるAsp残基がGlu残基に置換されているためリン酸化修飾を受けるこ とができず、本来のRDとしての機能を失っていると考えられる。前年度までの研究により、PRR7のRLDはターゲットプロモーター上流へのDNA結合能には影響を与えないが、ターゲットプロモーター近傍のヒストン脱アセチル化に関与していることが分かった。さらに、RLDはPRR7におけ る唯一の二量体形成ドメインとして機能していることが明らかになった。そこで、RDとRLDとの構造比較からRLDに特徴的なアミノ酸に部位特異的変異を同定し、改変型PRR7の機能をprr9 prr7 prr5変異体植物に導入することにより、RLDの構造と機能に関する知見を得た。その結果、二量体形成活性を失ったRLDはprr変異を相補することができないこと、RLDに導入したアミノ酸置換変異は概日リズムの振動特性に多様な影響を与えることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
RLDの役割に関してその構造と機能との関係を解析することにより、RLDが時計因子PRRの構成ドメインの一つとして転写抑制活性の強度を調節していることあが明確になってきた。また、RLDがPRRの半減期に影響を与えることがわかってきた。本研究をPRR分子が振動体として一定期間機能する仕組みの理解へと発展させることができるのではないかと考えている。
本研究の過程で、RLDはPRR7のヒストン脱アセチル化活性に必要であるとともに、タンパク質の半減期の調節においても重要な役割を担っていることが推定された。PRR7の分解にはポリubiquitin化を介した26Sプロテアソーム系が関与していることがMG132阻害剤を用いた解析から示唆されたので、RLD 内に存在するリジン残基を他のアミノ酸残基に置換することにより、ユビキチン化の標的部位を同定するとともに、半減期の異なるPRR7が概日時計の性質に如何なる影響を与えるかを解析する。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
Nat. Commun.
巻: 13 ページ: 1660
10.1038/s41467-022-29316-2
Genes Cells
巻: 26 ページ: 698-713
10.1111/gtc.12878