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2018 年度 実績報告書

細菌細胞の乾燥によるガラス転移:物性研究から解明する静菌と殺菌の制御メカニズム

研究課題

研究課題/領域番号 18H02148
研究機関北海道大学

研究代表者

小関 成樹  北海道大学, 農学研究院, 准教授 (70414498)

研究分担者 川井 清司  広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (00454140)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードガラス転移温度 / 水分活性 / 耐熱性
研究実績の概要

低水分活性(乾燥)食品における食中毒細菌の長期間にわたる生残メカニズムの解明,さらには芽胞を形成しない栄養細胞型細菌の乾燥耐性獲得メカニズムの解明を最終目標とする。従来の生物学的なアプローチではなく,細菌細胞の物理化学的な性状変化に着目して,細菌細胞が乾燥に伴いガラス転移を生じていると考え,今年度は以下の2つの課題に取り組んだ。
①従来では測定が不可能であった生物試料のガラス転移温度の測定を,我々研究グループが新たに開発した昇温レオロジー測定により実現を目指した。その結果,乾燥耐性を有するサルモネラ属菌の低水分活性環境下におけるガラス転移温度の測定方法を確立した。また,サルモネラの血清型の違いによって,乾燥耐性が異なる現象が報告されているが,その原因として血清型によってガラス転移温度が大きく異なることを見出した。
②水分活性レベルとガラス転移温度との関係性を明らかにすることで,細菌の乾燥環境下における生残メカニズムを明らかにして,さらには死滅挙動の予測を可能とするこを目指した。その結果,サルモネラ属菌は水分活性の低下に伴い,ガラス転移温度が上昇することを明らかにした。また,水分活性の低下,すなわちガラス転移温度の上昇に伴い,耐熱性が上昇することを明らかにした。さらに,菌株間での耐熱性の違いがガラス転移温度の違いによるものであることを見出した。水分活性とガラス転移温度との関係性から,耐熱性を予測するための基礎資料をえることができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

新たな手法による細菌細胞のガラス転移温度の測定に関して,予定どおり今年度は以下の2つの課題に取り組むことができた。一つ目は,従来では測定が不可能であった生物試料のガラス転移温度の測定を,我々研究グループが新たに開発した昇温レオロジー測定により実現を目指した。その結果,乾燥耐性を有するサルモネラ属菌の低水分活性環境下におけるガラス転移温度の測定方法を確立できた。二つ目は,水分活性レベルとガラス転移温度との関係性を明らかにすることで,細菌の乾燥環境下における生残メカニズムを明らかにして,さらには死滅挙動の予測を可能とするこを目指した。その結果,サルモネラ属菌は水分活性の低下に伴い,ガラス転移温度が上昇することを明らかにした。また,水分活性の低下,すなわちガラス転移温度の上昇に伴い,耐熱性が上昇することを明らかにした。さらに,菌株間での耐熱性の違いがガラス転移温度の違いによるものであることを見出した。
以上のように概ね当初の予定どおりに研究が進展している。

今後の研究の推進方策

前年度までに確立した細菌細胞のガラス転移温度測定手法を活用して,サルモネラ以外の他の菌種にも適用可能であるかを検討する。具体的には,Cronobacter sakazakiiをはじめとする乾燥耐性の高い菌種に加えて,乳酸菌のようなプロバイオティクスに資する菌種についても検討の幅を広げ,菌種間の乾燥耐性の違いとガラス転移温度の違い,水分活性との関係を明らかにすることで,あらたな制御パラメータとしての可能性を検討する。
さらに,微生物のガラス転移温度(Tg)制御方法の開発する。細菌のTgを可塑剤や硬化剤などによって制御する場合,それらの物質が細菌の細胞膜を透過する必要がある。一般に可塑剤は低分子であるため,電解質やポリオール溶液に浸すことで,容易に成し得られる。問題は細胞内への硬化剤の導入である。一般にTgの高い成分は分子サイズも大きく,細胞膜を透過させることはできない。この問題を克服するにあたり,申請者らは低分子同士の複合体形成に着目している。既往の研究(Macfarlane et al., 2002)により,ある種の電解質(塩化マグネシウム等)とポリオール(グリセロール等)とは乾燥状態において複合体を形成し,Tgが相乗的に高くなることが知られている。これらの物質はいずれも細胞膜を透過可能な分子サイズであり,細胞毒性も低い。したがって,細胞内に導入した後,乾燥することで,細胞内部で複合体が形成され,内部のTgを引き上げることが可能になると期待される。

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公開日: 2019-12-27  

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