本研究は以下の3つの研究課題を明らかにすることを目的として実施した。 1)昇温レオロジー測定法による乾燥した細菌細胞のガラス転移温度(Tg)測定方法のプロトコルを確立し,細菌細胞の死滅特性 を表す新たな評 価パラメータとして提案する。2)水分活性(aw)vs. ガラス転移温度(Tg)の関係を明らかにして,細菌の時間変化に伴う死滅挙動を予測するaw,Tg,保存温度をパラメー タとする数理モデルを開発する。 3)可塑剤および硬化剤による細菌細胞のガラス転移温度(Tg)制御方法を明らかにして,死滅挙動を制御(殺菌効果を向上/静 菌状態で長期生存 )可能とする技術を開発する。 その結果,乾燥耐性の高いCronobacter sakazakiiを対象として,各種の水分活性条件下でのガラス転移温度との関係性を明らかにした。さらに,水分活 性の違いと長期間にわたる生存挙動との関係性から,ガラス転移と生存特性との関係性を明らかにした。また乾燥方法の違いがガラス転移温度 ならびに生存特性に及ぼす影響についても検討して,自然界で起こりうる乾燥過程と,食品加工工程で生じうる乾燥過程とで,ガラス転移の発 生様式ならびに生存挙動について明らかにした。 すなわち,自然乾燥のような緩慢な感想と,凍結乾燥のような急速な乾燥とで,細菌細胞がガラス化する過程が大きく異なることを明らかにした。また,食品加工において重要な微生物である乾燥パン酵母の乾燥耐性についても,水分含量,水分活性,ガラス転移の観点から検討して,乾燥状態で安定する水分量,水分活性を明らかにした。
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