研究課題/領域番号 |
18H02155
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
堀尾 文彦 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (20165591)
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研究分担者 |
大野 民生 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (90293620)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ビタミンC / 抗炎症作用 / 炎症性サイトカイン / エンドトキシン / ODSラット |
研究実績の概要 |
ビタミンC(VC)生合成不能のODSラットを用いて、VC無添加飼料を与えるVC欠乏群とVC 300ppm添加飼料を与える対照群を設けてVCの抗炎症機能の実証と、その分子機構の解析を開始した。VC欠乏時には典型的な炎症マーカーであるC反応性タンパク質(CRP)の肝臓での発現上昇と血中濃度上昇がみられる。この症状はヒトのVC不足状態でも見られることが最近報告された。この機構を解明することを目的として推進した研究実績を示す。 1.VC欠乏により血中で上昇するSTAT3活性化サイトカインを網羅的解析で見出し、それがどの組織で発現上昇しているかを明らかにする。・・・・VC欠乏群と対照群の1血清を用いて、高感度抗体アレイ解析で約40種類のサイトカインの濃度を測定した。その結果、欠乏群で上昇したのはIL-6とLIFであった。そこで、各種組織(回腸、盲腸、空腸、肝臓、抹消血単核球、脾臓)でのIL-6とLIFのmRNAレベルを測定した。IL-6は、欠乏群で回腸でmRNAレベルが上昇し、門脈血中L-6濃度も上昇していた。この結果により、VC欠乏時には腸管(回腸)でのIL-6産生が増大して肝臓のSTAT3を活性化することによりCRPの発現誘導を行っていることが推察された。 2.無菌ODSラットでのVC欠乏によるCRP発現上昇の有無を明らかにして、CRP発現上昇に腸内細菌の存在が寄与しているかを明らかにする。・・・・無菌のODSラットの作製を日本クレア(株)の無菌動物施設で開始した。親ODSラットから帝王切開で取り出した無菌の仔ラットを無菌仮親ラットにつけて成長させることに3度挑戦して、そのうち1回は仔ラットを得た。そして最初のVC欠乏実験を行った。今後、あと1回の無菌ODSラットの育成を成功させて、再度の欠乏実験を行って最初の結果と合わせた上で結論を出す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高感度抗体アレイ解析はバックグラウンドのノイズも少なく、信頼できる結果を得ることができ、研究を予定通りに進めることができた。各組織のIL-6 mRNAレベルは思いのほかレベルが低く、測定方法の選択に時間を要したが、タックマンプローブを使う方法を選択したことによって正確な値を売ることができるようになった。無菌ODSラットの作製は、失敗なく進むとは思っていなかったが、やはり時間を要した。しかし、あと1回のVC欠乏実験を行えば、結論を導き出せるところまで進展することができた。
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今後の研究の推進方策 |
1.無菌ODSラットでのVC欠乏によるCRP発現上昇の有無を明らかにする。・・・・無菌のODSラットを作製し(日本クレア(株)にて作製)、腸内細菌非存在下ではVC欠乏による肝臓のCRP発現上昇が起こるかどうかを明らかにする。また、腸内細菌非存在下においてもVC欠乏によるIL-6の回腸での発現上昇と門脈血IL-6濃度の上昇が起こるかどうかを明らかにする。 2.VC欠乏による腸管でのIL-6産生上昇の機構を解明する。・・・・VC欠乏では転写因子のNF-kBやNrf2が活性化される。両転写因子の応答配列がIL-6遺伝子に存在するかをゲノム情報で確かめ、VC欠乏で回腸粘膜組織の核抽出液中にはNF-kBおよびNrf-2タンパク質の移行が増加していることを証明する。 3.IL-6がVC不足状態の血中のバイオマーカーとなる可能性を検討する。・・・・VC濃度が無添加、20、30、40、60、100(対照群)mg/kgの飼料をODSラットに与えて、血中のIL-6濃度、CRP濃度、VC濃度を測定して、血中のIL-6濃度がVC不足で鋭敏に上昇するバイオマーカーとなるかを検討する。
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