研究課題/領域番号 |
18H02157
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松井 利郎 九州大学, 農学研究院, 教授 (20238942)
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研究分担者 |
津田 孝範 中部大学, 応用生物学部, 教授 (90281568)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 糖尿病前症 / 糖尿病予防 / ポリフェノール / エネルギー代謝 / AGE / 最終糖化産物 |
研究実績の概要 |
本研究は、糖尿病発症前のかくれ期の段階での前症予防作用を食品成分に求め、作用機構を明らかにする新たな食機能研究を推進するものである。本年度は、候補食品成分として、非吸収性ポリフェノールであるテアフラビン(TF)とプロポリス由来成分であるアルテピリンCについて検討を加えた。動物モデルとして、糖尿病前症期が10週以上にわたる糖尿病自然発症ラット(SDT)を用いて、TF類の長期投与試験(25 mg/kg/day)を実施した。その結果、9週齢からのTF投与による空腹時血糖値の上昇は22週齢まで認められなかった。他方、22週齢において蛍光糖負荷試験(グルコース2 g/kg)を実施したところ、本週齢でのSDTラットは空腹時血糖は正常(77.7 ± 7.1 mg/dL)であるが、明らかな耐糖能異常が認められ、OGTT-AUC0-2hは598 ± 6 mg h/dLであったことから、糖尿病前症を発症していると判断された。TF投与群では OGTT-AUC0-2hが455±18 mg h/dLであったことから、TFの摂取は耐糖能改善作用があることが初めて示され、TFは前症からの糖尿病発症を抑制する作用を有していることが明らかになった。また、抗糖尿病前症成分を併用する(アルテピリンCとクルクミン)することで、低用量の投与により褐色脂肪細胞化の誘導が実現できること、この作用がM2マクロファージの集積と、この集積M2マクロファージからの局所的なノルエピネフリン産生によることを明らかにした。これらの作用はいずれも糖尿病前症改善作用に資するもので、糖尿病前症改善機構の説明ができるものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in vivoでの糖尿病前症予防作用を示す食品成分をすでに明らかにしており、最終年での前症予防機構の解明が大いに期待できるため。
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今後の研究の推進方策 |
動物レベルでの前症予防作用について、摘出組織を用いたグルコース取り込み系の関与の実証ならびに細胞を用いた検証を図る。
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