研究課題
本研究は、糖尿病発症前のかくれ期の段階での前症予防作用を食品成分に求め、作用機構を明らかにする新たな食機能研究を推進するものである。本年度は、非吸収性ポリフェノールであるテアフラビン(TF)の糖尿病前症発症予防作用の発現機構について詳細な検討を加えた。糖尿病前症期が10週以上にわたる糖尿病自然発症ラット(SDT)を用いたTF類の長期投与試験(25 mg/kg/day)を実施した結果、TF投与によって空腹時血糖値の上昇が22週齢まで認められないことを明らかにした。また、22週齢までの前症期において経口糖負荷試験(グルコース2 g/kg)を実施したところ、TF投与群で明らかな耐糖能異常を改善する作用があることが示された。そこで、糖尿病発症期である28週齢時にSDTを屠殺し、生化学的パラメータを明らかにしたところ、膵臓でのインスリン産生量並びに血中インスリンレベルにおいてTF投与群で増大傾向が認められた。他方、腸管でのグルコース吸収に関わる輸送体(SGLT1およびGLUT2)発現量に有意差は認められなかった。他方、TF群では小腸(空腸域)でのインクレチン(GLP-1およびGIP)に明らかな産生量増大が認められ、かつインクレチン分解を担うDPP-4の血中活性には変化は認められなかった。以上のことより、TF摂取による隠れ糖尿病発症の予防・改善には、インクレチン分泌の正常化が関わっていることが示唆された。in vivoでのTFによるインクレチン分泌祖促進作用はNCI-H716細胞においても再現され、TFがMCT/OATP取りこみ、ABC排出過程において、小胞体からの細胞内Caイオン放出を促進/AMPK活性化を誘導することを明らかにした。これらのシグナル系の活性化が食品成分による隠れ糖尿病発症予防を図る上で重要な作用因子となることが判明した。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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