研究課題/領域番号 |
18H02159
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
生城 真一 富山県立大学, 工学部, 教授 (50244679)
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研究分担者 |
戸田 弘 富山県立大学, 工学部, 講師 (60608321)
伊藤 伸哉 富山県立大学, 工学部, 教授 (90213066)
西川 美宇 富山県立大学, 工学部, 助教 (90749805)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | グルクロン酸抱合 / 硫酸抱合 / 脱抱合 / 腸内細菌 |
研究実績の概要 |
課題1今年度はスチルベン系化合物であるピセアタンノール及びメチル化誘導体の抱合体について脱抱合能を評価したところ、ケルセチンとは異なる脱抱合能を示すことが明らかとなり、ポリフェノールの種類によって脱抱合能が異なることから体内動態にも影響を及ぼす可能性が示された。また、ラット糞便中の抽出液を用いて、ケルセチン及びスチルベン系化合物抱合体に対する脱抱合能を評価した。グルクロン酸抱合体については顕著な脱抱合能を示したが、硫酸抱合体についてはいずれの化合物に対しても脱抱合能を示さなかった。これらの結果より、腸内細菌が有する脱抱合酵素によって腸内に排泄された抱合体に対する脱抱合能は腸内細菌叢に依存する可能性が示された。 課題2:代表的な腸内細菌の培養菌体を用いてケルセチン-グルクロン酸抱合体に対する加水分解活性を測定し、複数の菌株において有意にβ-グルクロニダーゼ活性を示すことが明らかにされた(生城グループ、未発表データ?)。これらの菌株のうち、その全ゲノム情報がデータベースに公開されているLactobacillus brevis RO1, Lactobacillus gasseri, Ruminococcus gravus よりβ-グルクロニダーゼ遺伝子配列を取得した。これらの配列を用いてアライメントを作成し、保存性の高い領域を特定した。これらの保存領域のアミノ酸配列から縮重プライマーを作成し、ヒト糞便サンプルより抽出したメタゲノムDNAサンプルに対してPCRを行った結果、いくつかの糞便サンプルにおいてβ-グルクロニダーゼと思われる増幅断片が得られた。これらの増幅断片をクローニングし、その塩基配列を決定した結果、Faecalibacterium prausnitzii 由来β-グルクロニダーゼ遺伝子と高い相同性を示すことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題1:腸内細菌叢におけるスチルベン系抱合体脱抱合能の解析:好気条件下での培養が困難である腸内細菌を栗原らが確立した培養系を用いて培養しヒト由来常在腸内細菌におけるスチルベン系化合物抱合体に対する脱抱合能を解析することに成功した。 課題2:腸内細菌由来加水分解酵素の網羅的探索と機能解析によるフラボノイド抱合代謝への関与:前年に引き続いて、前述の腸内細菌におけるケルセチン脱抱合能解析の情報をもとに加水分解酵素遺伝子の探索が可能となり、遺伝子クローニング及び大腸菌発現系による機能解析をおこなうことに成功した。しかしながら、硫酸抱合体の脱抱合に関与する分子種のクローニングには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
課題1:生体内においてポリフェノールは単一の修飾基のみならず複数の水酸基が異なる修飾を受けることがあり、血中での抱合代謝物の同定においてはしばしば混乱を生じる単一修飾による抱合体と同様に、ヘテロ修飾による抱合体の化学合成は困難である場合が多く、異物抱合酵素発現酵母を用いた本製造方法は極めて有利である。これら酵母菌株な組み合わせによる逐次的な変換により、グルクロン酸/硫酸基/メチル基のヘテロな修飾基を有する抱合代謝物の製造を目指す。さらに、前年度で検証した腸内細菌による脱抱合の基質として認識されるか否かについても検討していく予定である。また、最終年度では腸内細菌叢が宿主のポリフェノール代謝(特に脱抱合による腸肝循環)に及ぼす影響を解析するために、無菌マウスあるいは抗生物質によって腸内細菌叢を変動させたラットを用いて投与ポリフェノールの代謝を解析することを計画している。 課題2:腸内細菌由来加水分解酵素によるフラボノイド脱抱合能を分子レベルで解析するために、ヒト腸内細菌由来メタゲノムからのサルファターゼ遺伝子取得を伊藤らが開発したS-GAM法により行う。ヒト腸内細菌叢よりメタゲノムDNAを抽出し、サルファターゼ遺伝子源とする。遺伝子配列データベースより各種微生物由来サルファターゼ遺伝子の配列を取得し、系統樹による分類および保存領域の選定を行う。各サルファターゼファミリーの保存領域に特異的な縮重プライマーを設計し、調製した腸内細菌メタゲノムDNAを鋳型としてPCRを行う。この発現プラスミドを鋳型として、Inverse PCRによりドナーベクターの調製を行う。調製したドナーベクターおよびメタゲノムよりPCR増幅したサルファターゼ遺伝子断片を、インフュージョン法によりシームレスに連結し大腸菌へクローニングする。得られた形質転換体をライブラリーとし、サルファターゼ活性を指標とする
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