研究課題/領域番号 |
18H02162
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山口 淳二 北海道大学, 理学研究院, 教授 (10183120)
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研究分担者 |
佐藤 長緒 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (50609724)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ユビキチンリガーゼ / 植物免疫 / 膜交通 / 病原体認識受容体 / 植物 |
研究実績の概要 |
ATL31は,N末に膜貫通領域を有する膜局在RING型ユビキチンリガーゼ(E3)である。野生型ATL31に比べ,E3活性を欠損したATL31C143Sは高いタンパク質安定性を示す。興味深いことに,E3活性の有無によってATL31自体の細胞内局在性はダイナミックに変化する。すなわち,野生型ATL31は主に内膜系-特にTGN(trans-Golgi network)に局在するのに対し,ATL31C143Sは主に細胞膜に局在する。これらの知見から,ATL31は,自己ユビキチン(Ub)修飾を引き金として,細胞膜からTGNへと局在性が変化すると予想される。 ATL31の自己ユビキチン化による局在性の変化にATL31の相互作用因子であるTGN局在型SNAREタンパク質SYP61が関わることを明らかにした。また,植物体内においてSYP61がユビキチンK63鎖による修飾を受けていることや,in vitroにおいてATL31がSYP61のSNAREドメインのリジン残基をユビキチン化することを示した。最終的に,一過的発現系を用いてこのATL31によるSYP61のK63タイプのユビキチン化が植物体内でも起こることを証明した。これらの成果をまとめ,現在論文投稿中である。 C/N応答時のリン酸化プロテオームを実施し,広範なシグナル伝達にかかわるタンパク質のリン酸化状態を明らかにした。特に植物のエネルギーセンサーとして注目されているT6P-SnRK1がこの制御に深く関与することを証明した。上記リン酸化プロテオームより同定された新規受容体様キナーゼLMK1に関する解析を進めた。LMK1はLRR(ロイシンリッチリピート)とMalectinマレクチン様ドメインを持ち,細胞死制御に関与する因子であることを実験的に証明した。マレクチンドメインの機能を含めた今後の研究を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年9月の停電によるサンプル等の喪失というトラブルはあったものの,その後は順調に推移している。ATL31に関する論文は最終結論を得て,現在論文を投稿中である。FLS2を含めた研究については,引き続き研究を継続している。これに関連して本計画に示した新規受容体LRR=LMK1の研究については,リン酸化プロテオーム解析と合わせてFrontier in Plant Science において成果を発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
ユビキチンリガーゼATL31については,これと拮抗的に働く脱ユビキチン化酵素を含めた植物のユビキチン化状態制御に関する研究に発展してきており,この研究で新たな発見があった。現在秒単体認識機構については,糖シグナルとのクロストークを中心に研究が進展している。こちらについても研究の完成を急ぎたい。
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