研究課題
2018年度は、シアノバクテリアの重炭酸イオン輸送体SbtAおよびBicAのキメラ型タンパク質を発現するシロイヌナズナを交配し、共発現株の作出を試みた。交配により作出した株をPCR法で調査した結果、双方の遺伝子を持つ植物を作出できたことが確認できた。一方で、交配後に得られた株では親株での輸送体タンパク質発現レベルよりも低いレベルでしか発現ない株も見られた。そこで、2019年度はバックアッププランとして同一ベクターからSbtAおよびBicAを発現する植物の作出も併せて試みる。気孔開口調節因子GLK1については、相互作用する因子を探索するため抗体カラムを作製した。具体的には、CNBr-セファロースに自作抗体を架橋し、抗体ビーズを作製した。作製した抗体カラムを用いて複合体を精製したところ、複数の共精製されるタンパク質が見つかった。Protein A-セファーロースに抗体をおよび複合体を吸着させて精製する方法でも同様のタンパク質バンドが検出できたことから、GLK1複合体構成因子の可能性が高いと考えられる。現在、ゲルから切り出したタンパク質の分子同定を試みている。シロイヌナズナのPIP2型アクアポリンのCO2透過性について、微小pH電極法より評価した。また、CO2施肥施設での光合成測定実験により、高CO2条件でブドウの光合成がむしろ抑制される現象が生じ、且つそれには品種間差があることがわかった。ピオーネにおいては長期間のCO2暴露により抑制が解ける適応があることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
気孔因子(GLK1)、細胞膜因子(アクアポリン)、葉緑体胞膜因子(重炭酸イオン輸送体)のすべてをバランスよく進めることができたため、これらの因子の再構築に向け順調に進んでいると考えている。さらに、代表者グループが分担者グループを訪問し、実質的な共同実験を行うことができた。また、葉緑体内のCO2濃度を高めた場合、CO2施肥ブドウでの実験結果のように光合成が抑制される場合のあることがわかった。これに適応し高い光合成活性を回復できる品種があることから、この現象のメカニズム解明に同時に取り組む。
次年度も当初計画に従って研究を進める。重炭酸イオン輸送体の共発現株については、当初計画に加えて同一ベクターから共発現する植物を作出する予定である。また、アミノ酸置換によりアクアポリン分子種のCO2透過性の違いの主たる原因となるアミノ酸の同定を試み、高いCO2透過性を持つアクアポリン分子を作出する。
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Plant Physiology
巻: in press ページ: in press
10.1104/pp.19.00150
アグリバイオ
巻: 2 ページ: 1214-1218